「部品を作る」といっても単純ではない!? パーツ製作で知っておくべきポイントアイデアを「製品化」する方法、ズバリ教えます!(5)(4/4 ページ)

» 2021年03月18日 10時00分 公開
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量産部品のバラツキ

 同じ部品を複数製作(量産)していると、寸法や色などの“バラツキ”が必ず発生する。手作り部品は1回きりの製作であるため、万一バラツキが大きく、使用できなくても、その部品のみを返品して作り直すか、修正すればよく、基本的にバラツキを考える必要はない。だが、量産部品ともなると、量産ラインの稼働中に返品と修正は行えない。よって、量産開始前に量産部品として満足できるバラツキ範囲を部品メーカーと取り決める必要がある。

 寸法のバラツキは公差で定め、色のバラツキは複数の色サンプルを作成して定める。バラツキを小さくすると設計者は安心であるが、不良率がアップし、部品コストも高くなる。一方、バラツキを大きくすると製品仕様を満たすことができない部品になってしまう場合がある。従って、製品の仕様を満たす最も大きいバラツキ範囲を決める必要がある。これは部品メーカーの品質管理のスキルや、バラツキがある程度大きくても製品仕様に影響を与えないよう設計する設計者のスキルにも影響してくる。

 バラツキはここで挙げた寸法や色以外にも、印刷の傾きや部品の反り、バリの大きさ、表面の傷や異物、部品同士の接合部の強度など、さまざまなものがある。それらの取り決めも部品メーカーと行う必要がある。

部品のバラツキ範囲を設計者は部品メーカーと取り決める 図5 部品のバラツキ範囲を設計者は部品メーカーと取り決める [クリックで拡大]

承認部品

 金型の変更/修正を行い、さらに前述したバラツキ範囲の取り決めを完了した後、承認部品を製作する。承認部品は同じものを複数作り、設計メーカーと部品メーカー、組み立てメーカーで同じ部品を所有する。部品メーカーに対しては、「これと同じ部品を製作してください」、組み立てメーカーに対しては「これと同じ部品を購入してください」という指示になる。また、この承認部品にバラツキを加味しておくことで、良品/不良品の判断も可能となる。この承認部品は量産期間中ずっと保管され、部品を依頼する設計メーカーと部品メーカーは長い付き合いとなるのだ。



 今回は、手作り部品と量産部品の違いと、それらを製作する部品メーカーの違いについて解説した。製品化とは、最終的には量産部品を製作することであり、手作り部品を作るのとはまた別のスキルと知識が必要になる。本稿を参考に理解を深めていただければ幸いだ。 (次回へ続く

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筆者プロフィール

小田淳

オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)

上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。

ロジカル・エンジニアリング Webサイトhttps://roji.global/

著書


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