これらの課題を抽出した中、解決に向けて、必要なプロセス改革やインフラ改善の取り組みをトライ&エラーで進めていったという。まず、プロセス改革として取り組んだのが「部品品質におけるドキュメントの整備」「組み立て検査指導における事前検証と教育」「解析対応」などである。これらは基本的には日本と現地工場との情報共有の仕組み作りである。
部品品質におけるドキュメント整備については、現地で設計意図や部品確認のポイントなどの基準を判断できるように、ドキュメントの整備を行った。設計変更のビフォー/アフターを把握し変更部品を確認できるような「Before/Afterシート」などの用意や、重要部品や過去トラブルのあった部品などの重点チェック項目の用意と共有、現地メンバーで部品などを納入するビジネスパートナーの工程監査を行えるようなマニュアルの用意などを進めた。
組み立て検査指導については、作業指示書の説明や注意ポイントや変更点などの説明を作業者に事前に行うようにした。また、設備のリアルタイムモニタリングや、カメラによる作業状況の遠隔モニタリングを行い、疑問点やトラブルなどがあれば、日本から対応や指導ができるような体制を構築した。
解析対応については、生産した1台目の製品を日本に送付し、日本でも現物を確認できるようにし、同じ問題点を共有できるようにした。また、現地での品質試験の結果を可視化ツールで遠隔でも共有できるようにし、品質での課題が発覚した場合はすぐに対応がとれるようにした。
OKIデータ 生産統括本部 生産技術部 生産技術チーム チームリーダーの加藤尚之氏は「従来は、こうした取り組みを全て技術者が直接現地に行くことで解決していた。事前にバーチャルで仮想試作ラインなどを構築しシミュレーションなどを行って精度を高めたラインを設計して海外工場に持っていくが、試作ラインと量産ラインでは、やはり異なってくる。数を生産することで出てくる問題や変化などもある。こうした問題を現地でつぶして安定した生産を作り上げるわけだが、現地に行けないために1つ1つの作業の意図を明確化しリモートでの代替措置に置き換えていく必要があった。試行錯誤を重ねながら作り上げていった」と語っている。
さらに、金型や部品の認定など外部パートナーを含めたプロセス改革なども必要となる。金型や部品の認定などについては、工場での日常的な活動の中で発生する業務である。そこで実際に取り扱う現地のメンバーで品質などについてある程度判断できるようにする必要があった。そこで「6つの施策」として以下を徹底したという。
これらに加えて、進捗確認などを決め細かく行う他、「Before/Afterシート」で設計変更点の明確化などを進め、設計から生産までの情報共有が円滑に行えるようにした。また、サプライヤーの工程監査についてもドキュメント監査やリモート監査などを段階的に実施し、遠隔での体制を整えた。ただ、進めていく中で、意思疎通の問題なども頻発したため、定例会議などを通じて繰り返し意識合わせを行ったという。
加藤氏は「現地に行くことができれば実際のモノを示しながら説明をしたり、やって見せたりということが可能だが、リモートだとそれができない。技術の進歩で容易になったがそれでもまだそれぞれの意図が異なる場合もあるのでその意識合わせが求められる」と述べている。
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