これらの課題に対応するため、環境整備などにも取り組んだ。最も大きなものが、カメラと通信端末を工場内に設置し、海外工場と日本とをライブ配信でつないだ取り組みだ。海外工場で生産ラインを遠隔で撮影し、作業トラブルなどを把握するものや、作業者の作業内容を把握するものなど、複数のカメラを設置。一方で日本側には「コックピット」として、カメラの映像と、工程管理システムなどの情報を表示したモニタールームを用意。必要があればその場に関係部門のメンバーが集まってすぐに話をしながら課題改善を行う体制とした。
コックピットルームは生産試験室に設置しており、生産面でトラブルが起きた場合、その周辺ですぐに課題解決のための作業確認や治具製作など試行錯誤が行える。OKIデータ 生産統括本部 生産技術部 生産技術チーム サブチームリーダーの高井秀人氏は「現場でトラブルがあったり、作業データなどから問題が見えたりした場合にはすぐに、日本と現地工場のメンバーで集まって一緒に解決への取り組みを行えるようになった。同じ場にいるような形で進められている」と語っている。
OKIデータのこうした取り組みが進んだ要因としては、土台として生産データや工程データを共有する一種のスマートファクトリー化の仕組み作りが進んでいたことも大きい。もともと「工程管理システム」として、生産の状況をリアルタイムで監視し、問題点を迅速に把握できるシステムを独自で用意しており、さまざまなツールで工程を分析できるような体制が整っていた。さらに、プリンタの品質試験結果をリアルタイムで取り込み、そのデータの変化から不具合予兆を把握し、早期にフィードバックを行う「可視化システム」などもあり、品質面で発生した問題もシステムによる情報共有で把握できるようになっていた。
OKIデータ 生産技術本部 生産技術部 生産改革チーム チームリーダーの望月克氏は「既にインフラとしての大枠は遠隔でも量産立ち上げが行える体制が整っていた。新たな投資としては、日本側のモニターや海外工場でのカメラとWi-Fiなど程度ですんでいる。もともとそういう発想がなかっただけで『リモートでやる』となった時に周辺を見てみると材料はそろっていたという形だ」と語っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.