第2位は日本製鉄が2020年2月に発表した2019年度(2020年3月期)の通期見通しを報じた「日本製鉄が4900億円の損失計上で高炉を追加休止、経営刷新に向けDX推進部も新設」でした。米中貿易摩擦による製造業向け鉄鋼需要の減少や価格低迷などが原因となり、減損損失などを含めて約4900億円の損失を計上しました。
日本製鉄は2020年2月時点での通期業績見通しにおいて、売上高が5兆9000億円で、事業損益は3100億円、当期損益は4400億円の赤字となり、厳しい経営環境にあるとの認識を示しました。米中貿易摩擦という地政学的要因だけでなく、国内市場の高齢化や人口減少による建設需要の縮小や、海外現地生産拡大などによる顧客需要の減少といった中長期的なマイナス環境要因も予想した上で、大規模な対応策を講じる必要があると強調しました。
具体的な対応策は「生産設備の構造対策」と「経営ソフト刷新施策」の2本柱で推進する予定とのこと。前者については日鉄日新製鋼 呉製鉄所の全設備と和歌山製鉄所第1高炉、その関連設備を休止する他、厚板事業の体質強化など事業改善を目的とした既存製造ラインの休止などを決定しました。
なお、日本製鉄は同年5月に、COVID-19の感染拡大による鉄鋼需要の急減を理由に、高炉を追加で休止し、高炉稼働率はリーマンショック時も下回る60%程度となったと発表しています(関連記事「日本製鉄は新型コロナで高炉稼働率が60%に低下、リーマンショック時も下回る」)。その後、同年11月には、2020年度(2021年3月期)の通期見通しとして、売上高は約4兆8000億円、事業損益は600億円、当期損益は1700億円の赤字になると発表しました。
第3位は大手メーカーの工場や事業所で従業員のCOVID-19感染が相次いで確認されたことを報じた「トヨタ東芝村田TDKの工場従業員が新型コロナに感染、スバルは操業停止を前倒し」でした。
同記事の掲載時期に前後して、トヨタ自動車やマツダ、日産、三菱自動車などの大手自動車メーカーがCOVID-19による自動車需要の急減によって車両生産を停止したニュースや、ソニーやルネサス エレクトロニクスも海外生産への影響に言及するなど、大手製造業による発表が相次ぎました。製造業全体の需給状況が急速に悪化し、サプライチェーンに甚大な影響が出だことから、多くの製造業読者に読まれた関心度の高い記事となりました。
MONOistで掲載した記事からは、COVID-19感染者が初めて出たときの企業の対応も振り返ることができます。例えば、トヨタ自動車が最初に感染発生を発表したのは3月20日でした。その後、同じ工場に勤める濃厚接触者の方も発症する事態となり、高岡工場(愛知県豊田市)の第1ラインは3月23〜25日の3日間にわたって稼働停止となりました。しかし、その後は感染が疑われた時点で職場の消毒作業を実施したことで、工場の稼働への影響を防ぎました。また、東芝では同年4月に、東芝エレベータの府中工場に請負業者の従業員がCOVID-19に感染していたと発表。同社も同従業員が勤務するエリアを消毒し、5日間程度閉鎖して安全性を確認した後、迅速に稼働を再開する方針で対応しました。
記事の掲載時期は、東京都でもCOVID-19の感染者数が日にを追うごとに増加していた感染第1波の頃でした(残念ながら、現在はさらに増加していますが)。急速なデジタル化やリモート化が難しい工場。稼働停止のニュースがいつまで続くのかと、戦々恐々と見ていた読者も多かったのではないでしょうか。
4位以下の記事にも、COVID-19に関連した記事がいくつもランクインしています。6位の「自動車業界と物流業界の経済的損失が深刻化か、新型コロナの影響予測レポート」ではドイツのコンサルティング企業であるローランドベルガーが発表した「自動車」「機械」「物流」「製薬」の4分野における予測レポートの内容を紹介しました。
COVID-19に対する大手メーカーの通期的取り組みも関心の的となりました。8位の「東芝の新型コロナ対応は夏の五輪休暇を前倒し、4月20日から国内全拠点で休業へ」では、2020年4月20日からゴールデンウイーク終了まで全拠点を休業にするという、思い切った経営判断が注目を集めました。
10位の「日立は新型コロナで売上高1兆円減も利益確保、東原社長『10年間の改革の成果』」では、2019年度(2020年3月期)の連結決算と2020年度の業績見通しを報じています。COVID-19の影響で、2020年度通期の業績予想は売上高が前年度比19%減の7兆800億円となるものの、調整後営業利益は同43%減の3720億円で黒字を確保する計画です。同社執行役社長 兼 CEOの東原敏昭氏はリーマンショック後の大赤字と比較して「リーマンショックよりも厳しいといわれる今回のコロナショックでも利益を確保できる見込みが立っているのは、この10年間での改革の成果が表れている」(同記事より)と説明しました。
ちなみに日立製作所は2020年10月に、「Lumada」事業をコア事業とするITセグメントなどが好調だったことから、2020年度の通期業績見通しを、売上高7兆9400億円、調整後営業利益4000億円と上方修正しています。
COVID-19以外のトピックスでは「DX」も注目を集めたようです。7位の「『タイヤを売るだけでは生きていけない』ブリヂストンが抱える“強烈な危機感”」では、タイヤを基点としたデータソリューションビジネスの整備を急ぐブリヂストンの様子を紹介。また、9位の「『DX銘柄』35社と『DX注目企業』21社を発表、グランプリはコマツとトラスコ中山」では東京証券取引所の上場企業の中から、DXによって優れたデジタル活用の実績を出した企業が「DX銘柄」として取り上げられたと報じました。
冒頭でも触れたように「After/Withコロナ」は2021年もホットな話題として語られ続けるでしょうし、その中でもDXは欠かせないトピックスとなるでしょう。コロナ禍を受けて、あるいはコロナ禍が後押しとなって「DX企業への転換」を大々的に掲げた大手メーカーは、今後、改革プロセスの着実な実行力が一層問われることになります。DXの具体的なユースケースがどのように蓄積されていくのか。2021年も引き続きウォッチしていきたいと思います。
なお、2020年以前に公開した記事も含めた製造マネジメントフォーラムの総合ランキングは以下のようになりました。
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