ブリヂストンは2020年7月8日、第3の創業(Bridgestone 3.0)として2020〜2030年を対象とした中長期事業戦略構想を発表した。タイヤ事業をコアと位置付けつつも、タイヤを取り巻くデータなどを活用したソリューション事業に大きく舵を切る方針を示した。
ブリヂストンは2020年7月8日、第3の創業(Bridgestone 3.0)として2020〜2030年を対象とした中長期事業戦略構想を発表した。タイヤ事業をコアと位置付けつつも、タイヤを取り巻くデータなどを活用したソリューション事業に大きく舵を切る方針を示した。
ブリヂストンでは2031年に創業100周年を迎えるが、今回の中長期事業戦略構想ではその先となる2050年を見据え、新たな経営ビジョンとして「サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」を掲げ、経営の中核に「サスティナビリティ(持続可能性)」を位置付けることを発表した。それに伴い企業ロゴなどと並んで示すブランドメッセージも変更し新たに「Solutions for your journey」へと改めた。
新たな中長期事業戦略構想についてブリヂストン 代表執行役 Global CEOの石橋秀一氏は「外部環境の変化、モビリティ業界の変化、タイヤ業界の変化などを見定めて上で事業戦略を見極めて策定した」と語る。
外部環境の変化としては「不確実性」を挙げる。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含め、予測不能なことが定常的に発生する環境である。社会の仕組みや経営環境も不安定で大きく動く、不確実性が高い状況だ。その中で経営もフレキシブルにアジャイルに軌道修正できる必要がある」と石橋氏は語る。そしてその中で重要になるものとしてDX(デジタル変革)を挙げる。
石橋氏は「こういう環境に対応するためには、DX抜きでは難しい。ブリヂストンでは2010年に素材、2016年にモノづくり(EXAMATION)(※)と顧客接点(Tirematrics)、2019年にWEBFLEETと基盤のDXに取り組んできた。2020年はエンジニアリングチェーンのDXを進める方針だ」と述べている。
(※)関連記事:伸び縮みするゴムを最適管理、ブリヂストンが日産2万本のタイヤをAIで生産へ
モビリティの変化としては、MaaS(Mobility as a Services)とCASE(コネクテッド、自動運転、シェアード、電動化)を挙げる。「所有と利用のように、モビリティ構造の多様化が進み、収益構造も変化する。こうした動きに対応していく必要がある。方向性としては『Bridgestone T&DPaaS(Tire & Diversified Products as a Solution)』でモビリティ社会を支えていく方向性で考えている」と石橋氏は述べる。
ビジネスプラットフォームである「Bridgestone T&DPaaS」は、ブリヂストングループがこれまで培ってきたタイヤに関する知見やグローバルサービスネットワークを融合し、MaaS(Mobility as a Service)に関わる顧客やサービス事業者に向けて展開する基盤である。
具体的には、MaaSなどが広がり車両構造も複雑化する中、車両の高コスト化が進むが、それを高稼働率でカバーするビジネスモデルや、「Bridgestone T&DPaaS」によりリペアではなくメンテナンスで対応する仕組みの構築を進める。また、MaaS型になれば、あらゆるクルマが「所有から利用へ」とビジネスモデルが変わりB2C型からB2B型に変わる。その中では消耗品となるタイヤもリース/サブスクリプションモデルも切り替えていく必要がある。
これらを踏まえて、リアル×デジタルの強みを打ち出していく方針だ。「自動車部品で唯一路面に接しており、路面から直接情報を取得できるのがタイヤの強みだ。タイヤとつながることによる価値創造を進めていく。また、MaaSなどを構成するシステムとこれらのタイヤから得られる情報を連携させることで、新たなモビリティシステムを支える存在を目指す」と石橋氏は語る。既存のタイヤビジネスの高付加価値化を進める一方で、デジタル技術を組み合わせて新たに広がるソリューションサービスビジネスを大きく広げていく方針だ。
タイヤ業界の現状については「製造業として利益の出せる業界はあるものの、全体としては悪化傾向が続くと見ている。業界内格差は拡大するだろう。その中で危機感を持って冷静に対応を進めていくことが重要だ。業界の変化を見据えて抜本的対策を進めていく必要がある。まずはタイヤ・ゴム事業で収益構造を確保するとともに、これらの強みをソリューション展開に生かし、収益構造の変革と成長につなげていく」と石橋氏は語る。
さらに「タイヤ業界全体で見れば、売上高も営業利益率も年々低下しているのが現状だ。ブリヂストンとしても同様の比率で微減が続いている。座して待っているだけでは生き残れない。強烈な危機感を持っており、その危機感を表現したものが今回の中長期事業構想である」と石橋氏は危機感を強調した。
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