「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

レンタカーではなくパーソナルモビリティにこだわる、福岡県糸島のワーケーションモビリティサービス(2/2 ページ)

» 2020年12月10日 16時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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 福岡市に本社を構えるスマートデザインアソシエーションは、遊休不動産の活用の他、シェアオフィスやイベントスペースなどの運営によるコミュニティデザインを事業とする。同社は糸島でワーケーションを提供するにあたって、移住してきて事業を開始したなどさまざまなタイプの地域住民のつながりが足りないことに課題を感じていた。そこで、特定の目的地や飲食店だけを訪問して終わる観光ではなく、糸島の各地を巡って過ごしてもらい地域のファンを増やすツアーの検討を開始した。

 実証実験ツアーでは、パーソナルモビリティで移動する4つの観光コースを用意している。所要時間1時間半から6時間までで、糸島半島1周、海釣り、映画「となりのトトロ」に出てくる森と似た景色を見ることができるエリア、飲食店が集まった公園、1870年創業の酒蔵などが訪問先として用意されている。パーソナルモビリティの充電中に立ち寄ってもらえることを打ち出し、地元企業も協力するツアーができたとしている。

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パーソナルモビリティを使った観光を提案する(クリックで再生)

 現時点では環境省の補助金を使ったツアーであり、持続的な企画にできるかどうかが課題となる。そのためには「何度も来てもらえるような、ワーケーションのユーザーと地元とのつながりが続く関係性をつくりたい。SNSのために写真を撮って終わるのではなく、地元の人に会いに行ってもらうような内容が必要だ」(スマートデザインアソシエーション)という。また、ワーケーション中の業務を勤務実績として認定できるかどうか、企業のルール整備も必要になる。


 近畿日本ツーリスト九州によると、パーソナルモビリティは駅から目的地までの移動手段として観光業で注目が集まっているという。糸島半島の場合は、JR今宿駅から移動するための交通機関がなかった。また、城跡や城下町など普通車で走るには道が狭い観光地でもボディーサイズの小ささが評価されている。自治体などからも、離島の観光でパーソナルモビリティを使いたいという声が寄せられた。

 スマートデザインアソシエーションは「単純に場所を移して仕事をするだけのワーケーションではなく、新しいモノや人に触れる時間にしてもらいたい。ワーケーションから日常に戻ると違う目線に気が付いたり、新しいことをゼロから考えたりできるような過ごし方を提供していきたい」と述べている。

観光コースに含まれている立石山からの景色。玄界灘が見える(クリックして拡大) 出典:糸島市観光協会

 i-ROADやCOMSは「ミニカー」(第一種原動機付自転車)に該当する車両だが、軽自動車の一種で、ミニカーよりも定格出力が大きい「超小型モビリティ」の普及に向けた制度整備も進んでいる。国土交通省は2020年9月に道路運送車両法施行規則等を一部改正し、走行できる地域や自治体を制限せず一般道であれば走行できるようにし、衝突安全基準も設けた。トヨタ自動車は2020年内にも超小型モビリティに該当する小型EVを発売する予定だ。超小型モビリティが“量産”されることで、新たな移動手段としての普及が期待できそうだ。

ミニカーと超小型モビリティの区分(クリックして拡大) 出典:国土交通省

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