明治安田厚生事業団体力医学研究所は、勤労者の活動や睡眠時間が心理的ストレスや仕事への活力に関連するかを調査した。その結果、平日座る時間を60分減らして睡眠に充てると、メンタル不調が減少する可能性があることが分かった。
明治安田厚生事業団体力医学研究所は、2020年10月22日、勤労者の活動や睡眠時間が心理的ストレスや仕事への活力に関連するかを調査した結果を発表した。今回の調査は、同研究所の「明治安田ライフスタイル研究(MYLSスタディ)」に、2017〜2018年に参加した勤労者1095人を対象とした。
対象者の腰に活動量計を装着し、普段の生活で1日当たりどれくらい座っているか(座位行動)や、体を動かしているか(身体活動)について時間を測定した。また、調査票によって日常の睡眠時間を評価し、メンタルヘルスは心理的ストレス(K6調査票)とワーク・エンゲージメント(WE;UWES-9の活力に関する項目)を指標として評価した。
これらを基に、24時間の行動とメンタルヘルス(心理的ストレスと仕事への活力)の関連性を分析したところ、メンタルヘルスは平日の睡眠、座位行動、身体活動のバランスが関連していることが分かった。例えば、睡眠時間の短いことと、座位行動や低強度身体活動の時間が長いことは、メンタルヘルスの不調に関連していた。
この結果を基に、これらの行動を変化させた場合のメンタルヘルスへの影響について統計的に予測したところ、座位行動や低強度身体活動を1日当たり60分減らして、その60分を睡眠に充てると、メンタルヘルスの不調が11〜26%ほど低くなる可能性が示された。ここでの座位行動や低強度身体活動は、ほとんどが職場での行動であることから、仕事に伴う行動と言える。
また、運動やスポーツなどの身体活動の時間と休日について、それぞれメンタルヘルスとの関連を調べたところ、どちらも明確な関連性はなかった。これらの結果から、勤労者のメンタルヘルスの管理には、平日に適切な睡眠時間を確保することが重要であることが分かった。
同研究所によると、海外の研究でも、座位行動を減らして運動を増やすことが良好なメンタルヘルスにつながることが報告されているという。OECD(経済協力開発機構)の調査では、日本は睡眠時間が短い人が多いとされており、メンタルヘルスを良好にするために行動を変える場合は、睡眠を優先した方がよいと考えられる。
十分な睡眠時間を確保するため、経営者は職場での長時間労働(残業)を、従業員は日常生活での座位行動や仕事上の行動を、それぞれ見直すといった取り組みが必要だと言えそうだ。
なお、同研究結果は「1日の行動時間とメンタルヘルス」の因果関係を示すものではなく、対象者は通勤を含めた活動量が多い首都圏のホワイトカラー勤労者集団であるため、今回の結果が活動量の少ない人や他の職種の人に当てはまるかについては、別途検討が必要となる。
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