テスラ向け新型電池の開発にも着手、パナソニック2Q決算は回復傾向製造マネジメントニュース

パナソニックは2020年10月29日、2021年3月期(2020年度)第2四半期の業績を発表した。売上高は減収となったものの、最終赤字となった第1四半期の業績からの回復を示した。

» 2020年10月30日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 パナソニックは2020年10月29日、2021年3月期(2020年度)第2四半期の業績を発表した。売上高は減収となったものの、最終赤字となった第1四半期の業績からの回復傾向を示した。また、テスラが新たに発表した車載電池「4680」の開発に着手したことなども明らかにした。

第1四半期から一転し回復傾向を示す

photo オンラインで会見をしたパナソニック 取締役 常務執行役員 CFOの梅田博和氏

 パナソニックの2020年度第2四半期の業績は売上高が前年同期比15%減の1兆9533億円と減収となったものの、営業利益が同11%増の928億円、税引き前利益が同10%増の901億円、当期純利益が同15%増となる587億円という結果となった。第1四半期は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が直撃し、当期純損益が98億円の赤字という結果だったが、そこからは急回復を示した形だ。

 パナソニック 取締役 常務執行役員 CFOの梅田博和氏は「オートモーティブ関連事業、アプライアンス事業などが大きく回復し、売上高の回復が進んだことで、利益面での改善が進んだ。COVID-19の影響を見据えつつ、経営体質強化を加速するとともに新たに生まれた事業機会を見据えた取り組みを進めていく」と語る。

photophoto パナソニックの2020年度第2四半期の連結業績(左)とセグメント別業績(右)(クリックで拡大)出典:パナソニック

 COVID-19の影響については、全社では4〜5月がピークで6月以降は売上高で前年同月比90%以上の水準に回復してきたという。セグメント別では、航空機関連(アビオニクス)事業が大きな影響を受けているコネクティッドソリューションズ(CNS)社の回復は遅れている他、住宅着工数減少などが進むライフソリューションズ(LS)社の業績悪化があるものの、自動車需要の回復から車載機器や電池を扱うオートモーティブ(AM)社の回復傾向が鮮明となっている。

 梅田氏は「CNS社については中国での実装機販売が好調だったが、アビオニクス事業の落ち込みをカバーできなかった。一方でAM社については車載電池が増収となった他、車載機器ではIVI(In-Vehicle Infotainment)が大きく成長し増益を実現できている」と述べている。

photo COVID-19後の売上高の推移(クリックで拡大)出典:パナソニック

 車載機器の増益については「約3分の1が電池関連で、テスラ向けの円筒形電池事業が黒字化したのが大きい。また約3分の2が車載機器関連で、メイン顧客である日系、米系の顧客の自動車販売が回復したことから急回復した。従来、車載機器事業は欧州向けで苦戦してきたが、こちらも開発のピークが2019年度で、ピークは越えたので販売が増えれれば業績は安定すると見ている」と梅田氏は語っている。

 COVID-19への対策としては、第1四半期、第2四半期ともに前年から約700億円の固定費削減を進めた他、影響の大きなアビオニクス事業の構造改革を実施している。また、COVID-19で生まれた新たな事業機会に積極的に取り組み、製品拡充や増産対応に取り組むとしている。具体的には、公衆衛生や空調空質に関する需要の高まりに対応し「ナノイーX」搭載製品の拡充と訴求を強化する他、次亜塩素酸空間除菌脱臭機「ジアイーノ」の増産なども進めている。情報通信インフラへの投資拡大に向けては、導電性高分子コンデンサーの供給量拡大やデータセンター向け蓄電システムの展開などを進めている。またサーバやICT端末の生産設備需要が高まっていることから実装機の生産工場などもフル稼働しているという。

photo COVID-19を踏まえた事業機会への取り組み(クリックで拡大)出典:パナソニック

テスラ向けの新型電池開発にも既に着手

 テスラ向け車載電池事業は、第2四半期は黒字となったが「米国工場(ギガファクトリー)は既に黒字化が定着している。ただ、現在の年間換算32GWhの生産量を2021年度までに35GWhまで引き上げる計画で、切り替え投資を進めていく。この能力アップが収益性とのトレードオフの関係になっていることから、慎重に見極めながら進めていく。2021年度以降にはライン増設も行う。根本的な赤字要因はなく生産増強などを組み合わせて進めていくフェーズだ。ライン増強後、2〜3年後には利益率5%程度になることは視野に入っている」と梅田氏は語っている。

 一方で、テスラが2020年9月に開催した電池事業の説明会「バッテリーデー」で直径46mm×長さ80mmの「4680」と呼ばれる新型円筒形電池を公開し、今後同社の電気自動車(EV)に搭載していくことを発表したが、パナソニックも「4680」電池の開発に既に着手しているという。

 梅田氏は「以前からテスラとは電池についてのさまざまなコミュニケーションを進めており、テスラからの強い要望があったこともあり、既に開発に着手している。試作ラインなど検証の準備も進めている。パナソニックが目指す電池開発の方向性も高容量化、安全性なので、目指す方向性は同じだ」と述べている。

 ただ、現状では開発を着手したばかりで「(ライセンスなども含めて)ビジネスモデルなどについてはまだ何も話し合っていない」(梅田氏)としている。ただ「テスラのいうように2030年に3TWh分をカバーするというようなことを考えると、当然1社でまかなえるものではない。地域や性能などによってさまざまな企業で協力して進めていくことになるだろう」と梅田氏は述べている。

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