実験計画法にAIを組み合わせ、人工心臓のデザインを最適化することに成功医療機器ニュース

産業技術総合研究所は、実験計画法にAIの手法を組み合わせることで、少ないシミュレーション回数で人工心臓のデザインを最適化することに成功した。最適化により、同人工心臓は機能向上と副作用低下の両立が可能になっている。

» 2020年10月23日 15時00分 公開
[MONOist]

 産業技術総合研究所(産総研)は2020年10月13日、実験計画法に複数のAI(人工知能)の手法を組み合わせることで、少ないシミュレーション回数で人工心臓のデザインを最適化することに成功したと発表した。

 新たに開発した実験計画法は、従来の実験計画法にニューラルネットワーク(NN)と多目的遺伝的アルゴリズム(MOGA)を加えたものだ。「実験計画作成(Plan)」「実験(数値シミュレーション)の実施(Do)」「NNモデルによって目的変数を入力変数で近似化(Check)」「MOGAを用いて各目的変数に対して入力変数を多目的最適化(Action)」というPDCAサイクルを回すことで、入力変数、目的変数ともに多い複雑なシステムを、必要最小限のシミュレーション回数で、簡易に探索できるようになった。

キャプション 今回用いた新たな実験計画法 出典:産総研

 今回の人工心臓には、溝本数(16通り)、溝角度(18通り)、溝入口および溝出口の深さ(各5通り)と入力条件が4つあった。4条件の組み合わせは7200通りに及ぶが、開発した最適化手法を用いることで、約60回の解析結果を基に、動圧浮上遠心血液ポンプの動圧軸受の発生力を最大に、赤血球の損傷係数を最小にできた。つまり、少ない解析データから人工心臓のデザインを最適化することに成功した。

キャプション 開発手法による人工心臓デザインの探索 出典:産総研

 産総研では、中長期の血液循環を補助できる、動圧軸受を用いた体外設置型動圧浮上遠心血液ポンプの開発を進めてきた。動圧軸受は、高い軸受剛性と生体(血液)適合性を同時に満たす必要があり、最適化には複数の目的変数が必要となる。しかし、多入力多目的のシステムを試行錯誤で最適化するのは限界があるため、効率的な開発手法が求められていた。

 今回開発した手法は、医療分野だけでなく、製品設計や製造プロセスなど、幅広い分野においても研究開発を効率化することが期待できる。

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