芝浦工業大学は、電力を必要とせず化学エネルギーのみで駆動する人工心臓のようなゲルが、自律型ポンプとして機能することを証明した。ゲルのBZ反応による自発的な運動を動力源としている。
芝浦工業大学は2020年8月25日、電力を必要とせず化学エネルギーのみで駆動する人工心臓のようなゲルが、自律型ポンプとして機能することを証明したと発表した。同大学機械機能工学科 准教授の前田真吾氏らの研究グループによる成果だ。ゲルのベローゾフジャボチンスキー(BZ)反応による自発的な運動を動力源としている。
研究チームは、まずBZ反応で動く刺激応答性高分子ゲルであるBZゲルを収縮させた状態で化学液と一緒にカプセルに閉じ込め、BZゲルの膨張量を最大化。熱力学的サイクルを最大化することで、BZゲルの収縮量と膨張量を拡大し、ゲルと膜による単一構成物でできたポンプを作製した。
BZ反応による動きは、伸縮性のある膜の変形を介して外部の油を加圧し、加圧された油が力学的エネルギーを媒介して人工心臓のように液体を前後に動かすエネルギーとなる。
機器の動力源を電力から化学反応に代替できれば、メカトロニクス機器の複雑さを解消できる。しかし、従来のBZゲルの力学的エネルギーは変化量が小さく、またゲルを化学液中に浸す必要があるため、応用には限界があった。今回、実用可能な形が実験的に証明されたことで、ドラッグデリバリーなど医療分野への応用が期待できる。
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