生産中日程計画によって生産予定が立案されていても、資材の納入遅れや機械設備の故障などの理由のために予定通りの生産ができなかったり、生産直前になってから販売計画の変更が行われたりすることもあり、いろいろな事情によって同様の事態が発生します。そのために、日または週(あるいは旬)ごとに計画の修正を行わなければなりません。
この日あるいは週の生産日程計画を「生産小日程計画」といいます。通常、計画の対象期間は1日から1週間、日程の単位も1時間から半日と細かく、作業がそのまま実行できる内容の計画である必要があります。一般的な生産小日程計画の立案方法は、作業工程、作業者、機械設備別に各工程や作業ごとの開始と終了の時期を定めた詳細な計画の作成を行いますが、この行為をスケジューリング(Scheduling)といいます。詳細の計画を立案することが無意味な場合は、各作業の開始と終了の時期を時点ではなく作業期間で指定し、作業の順序のみを定めることもあります。
生産小日程計画は、通常、日または週(あるいは旬=10日間)単位の期間の計画であって、これは作業の直前に中日程計画の中から真に実行可能なものだけを取り出して計画します。生産大日程計画、生産中日程計画との関係においては、大日程、中日程、小日程の間には差がないのが理想的ですが、特に非量産形態においては、生産途中での設計変更や材料、部品などの納期遅延などの生産上の不確定要素が発生しますので、多少の差が生じるのはやむを得ないと考えるべきです。そこで、生産小日程計画において、最終的な生産の実行計画の決定を行うわけです。
生産小日程計画に基づいて、作業工程や作業者、生産設備に対して生産の指示が与えられて製造が実施されます。作業指示の種類には、加工、組立、検査(品質保証工程)などの指示の他、運搬や出庫・入庫の指示もあります。
生産小日程計画が日ごとに立案されたとしても、1日のうちで不具合事項や異常が発生すると計画が指示通りに実行できなくなってしまいます。そのため、当初に割り当てた作業の順序を変更したり、あるいは割り当てた作業そのものを変更して計画の調整が行われたりします。このような製造現場における計画の調整や作業の促進を「進捗管理(あるいは進度管理)」といいます。一般的には、進捗管理は、〔①現場の調査→②標準との比較→③調整→④結果の確認〕の4段階を踏んで実施されます。
また、資材の移動状態を管理することを「現品管理」、負荷と能力の調整を図ることを「余力管理」といい、「進捗管理」と合わせてこれらを「生産統制」といいます。ちなみに、ある会社では、製造部長が主催して、週1回の頻度で関係部署が参集して“生産統制会議”が行われています。そこでは、生産の進捗状況のフォロー、発生した異常事態の報告、作業順序の変更、負荷工数の均衡を目的とした他工程の応援方法などについてどのように対応するかを打ち合わせます。このようなきめ細かい努力の積み重ねが、結局「良い物を安く速く造る」ことにつながっていくのだと思います。
生産統制は、生産計画に対応する機能として、しばしば生産管理に位置付けられていますが、生産計画にも生産統制が含まれていることを留意すべきです。見込み生産形態の企業でよく用いられる“かんばん方式”は、管理された仕掛かり量で物を造っていくことで予定原価を維持していくという生産統制の一方法と見なすことができます。
生産日程計画の作成に当たっては、いまだ多くの課題がありますが、計画の立案方法については、OR(Operation Research)の分野でスケジューリング問題として種々研究されています。生産日程計画の作成に当たって問題となる項目としては、以下の3つが挙げられます。
◇ ◇ ◇ ◇
先日、神奈川県内で「生産管理セミナー」を開催しましたが、受講者の方から「生産日程計画によって生産を行うようにしたが、日程が守られない。どのように対処すればいいか?」という質問が出ました。昨日までは加工完了日が曖昧なまま製造していた状態から、急に加工完了日が指定されるわけですから、指示通りに作業しようという意欲は、なかなか湧いてきません。このことは、生産日程計画による生産管理を始める際に、多くの企業が抱える問題といっても過言ではありません。
この場合、「PDCAサイクル」にのっとって進めるのが良いでしょう。つまり、P(Plan)は、生産日程計画です。D(Do)は、実際の製造です。C(Check)は、生産日程計画と実績の差異検証と計画の反省です。この時点で終了してしまうので先のような質問に至るのです。「計画日程で作業が終了しなかったのはなぜか?」という原因調査とその要因排除を行って、次の生産日程計画へ反映させていきます。これがA(Action)です。つまり、PDCAサイクルの“A”をシッカリとやって頂きたいのです。先の質問をされる多くの人たちは、“C(Check)”の結果をできない理由として捉え、“A(Action)”への反映が全くやり切れていないのです。
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.