工場における生産管理の根幹となる「工程管理」について解説する本連載。第3回は、「生産日程計画」のうち「生産中日程計画」と「生産小日程計画」について説明する。
ここで、生産計画の役割を整理してみます。まず、「工程設計」は、製品や部品、素材に関する設計情報と、生産方式、生産順序、使用する機械設備などの製造全般に関する技術情報を必要とします。これらの情報と、標準時間(ST:Standard Time)を用いて、個々の作業についての注文別の仕事量(所要工数)を見積もりますが、これを「工数計画」といいます。所要工数は、主として、基準日程、日程計画、人員計画、原価計算の情報として利用されます。尚、社内の生産能力と仕事量の均衡を図る負荷計画は、工数計画の中で行います。
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加工や組立の順序、使用設備などが決定されると、次に、それぞれの作業に必要な治工具の選定、作業手順、工程経路などの設定を行います。これらの作業に関する技術情報を整理し、作成することを「作業設計」といい、最近はこの作業設計の粗密の度合いが後の日程計画に大きく影響することから、その重要性が増しています。
これら一連の全体計画を「工程計画」といいます。工程計画の次のステップとして「生産日程計画」を行います。生産日程計画は、立案される時期によって、「生産大日程計画」「生産中日程計画」「生産小日程計画」に分類されます。これら3種類の生産日程計画の特徴は、表1のようになります。生産大日程計画については、前回の連載第2回で説明しましたので、今回は、「生産中日程計画」と「生産小日程計画」について説明します。
生産計画の種類 | 受注の状況 | 生産工程の状況 |
---|---|---|
生産大日程計画 | 推定または期待値 | 能力の過不足のみが分かっていて、工程は未設定 |
生産中日程計画 | 受注量と内容は、ほぼ確定 | 資材、生産設備、人員の必要量と時期が分かっていて、手配済み |
生産小日程計画 | 受注量と内容は、確定済み | 工程は、設定済み |
表1 生産計画の種類と特徴 |
生産日程計画では、生産大日程計画を基準として、そこから順次詳細なものに展開していきます。内容の詳しさに応じて、「生産中日程計画」「生産小日程計画」といいます。生産中日程計画は、主として、材料や治工具類の手配、人手の能力と負荷の調整を目的として計画されるものです。一方、生産小日程計画は、作業の実施段階における詳細な生産進捗の調整をベースとして立案されるもので、個々の作業に対する最終段階の生産日程計画となるものです。
非量産の生産形態においては、前述の説明がそのまま当てはめられますが、繰り返し生産などの量産形態においては、通常は1カ月程度の一定期間内の生産内容が決まってしまいます。繰り返し生産ですので、生産内容や技術的な面も含めて安定しているので、生産内容決定の初期段階となる大日程計画の立案時に、中日程や小日程レベルの日程計画を作成することが可能となります。
この場合は、具体的な生産の実行に近づく過程で、生産計画の前提条件の変化などによって順次計画を修正していくことになります。前提条件の修正内容の多くは、見込み生産に対する需要の変動や、現在実行中の生産の進捗状況などがあります。この修正していく階段の最初の計画を“第一次計画”として、“第二次計画”、“第三次計画”などと改定版数を区別していいます。
修正のサイクルは、一般的には月単位で対応していきますが、この修正回数をできるだけ少なくするために、当初の生産計画の精度を向上させる手段として、「製造リードタイムの短縮(資材調達から納品までの所要日数)」が求められているという側面もあります。つまり、リードタイムが短縮できれば、作業着手日を遅らせることができますので、変更が織り込まれた内容で生産日程計画を立案することが可能となります。
この生産日程計画の立案の時期や組み方によっては、現場における作業効率、棚卸資産残高、生産性などが良くも悪くもなりますので、日程計画の作成に当たっては慎重を期さなければなりません。また、部品調達や製作手配など種々の手配の基礎データとなりますので、生産計画書の作成期限も厳守する必要があります。ここで生産日程計画が具備すべき条件を列挙すると以下のようになります。
これら5つの条件は、互いに相反する条件である場合もあり、ここに生産日程計画の作成の難しさがあます。どの条件を最優先させるべきかなどについては、それぞれの企業の運営方針などによって事前によく検討されていなければなりません。
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