――SaaSの活用、その実現を支えるOnshape、そしてAtlasプラットフォームの構想についてよく理解できましたが、国内での展開を考えると、クラウドやSaaS利用の障壁がまだ高いように思われます。その点、どのようにお考えでしょうか?
桑原氏 確かに、国内製造業の中にクラウドやSaaS利用に対して抵抗感を示す企業があるのは事実だ。ただ、COVID-19の影響でリモートワークが急速に浸透し、クラウドやオンライン会議システム、チャットなどを活用したニューノーマルに向けた働き方の模索も加速している。そうした中で、設計開発はリモートワークの対象外なのか? という疑問は当然わいてくるはずだ。もちろん、部署によっては現場でないと業務を遂行できないところもあるが、設計開発の領域においては仕事のやり方、あり方をデジタルの力で変えることができるのではないか。
実際、あるお客さまから大規模な3D CADデータをお借りして、Onshapeを用いたリモートコラボレーションのデモ環境を構築し、複数のサプライヤーがリアルタイムで連携し、設計作業を並行して進めていく様子をご覧いただいたことがあるが、従来のある意味バッチ的な仕事とは異なる、SaaSプラットフォーム上でのリアルタイムな連携、コラボレーションに大きな可能性を感じていただくことができた。
桑原氏 われわれとしても既存の確立されたモノづくりの現場に、いきなり完全SaaS型のOnshape、Atlasプラットフォームを全面採用してほしいとは言わない。最初のステップとしては、“SaaS CAD”という位置付けで、Onshapeを次世代製品開発に適した設計開発環境として提供するというアプローチが考えられるが、われわれはその先、「コラボレーション」をキーワードに、次世代の製品開発に必要な“新しい設計開発モデル”としてOnshape、さらにはAtlasプラットフォームの利用につなげていきたいと考えている。
――最後に、国内製造業におけるSaaS活用の期待と、PTCジャパンとしての今後の展望についてお聞かせください。
桑原氏 これからのモノづくりは、単に良いモノを作って売ればよいということではなく、多様化する顧客のニーズをキャッチアップして、製品の設計開発の中に取り込んでいかなければならない。そのためには、情報から隔離された環境ではなく、あらゆる情報とコネクトできる環境でなければならない。
また、ニューノーマル時代に向けて、リモートワークが当たり前になっていく中で、設計開発もリモート化が必ず求められるようになる。特に、日本の製造業は海外の取引先とビジネスをしているケースが多いため、遅かれ早かれ、そういった対応を迫られることになるだろう。つまり、これまでとは違うやり方で、設計開発を進めていく必要があるということだ。PTCはそうした次の時代に向けてエンジンをかけ、競合他社が付いてこれないほどのスピード感をもって、お客さまとともにまい進していきたい。
おかげさまで、現在PTCはIoTやARといった先端テクノロジーに関して、市場からも比較的高い評価をいただいている。そういう意味においても、新しい世界の実現に対して非常に良いポジションにいると自負している。もちろん、トラディショナルな領域で競合他社が優位な側面もあるが、これからの新しい時代、次世代の製品開発環境という点において、PTCは負ける気がしない。必ずや他の追随を許さないポジションを確立できるだろう。
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