あらゆる搬送シーンに対応するAGV、SLAMなど3つの走行方式を併用で物流のスマート化(2/2 ページ)

» 2020年08月24日 14時00分 公開
[池谷翼MONOist]
前のページへ 1|2       

組み合わせることで各走行方式の短所をカバー

 ZMP CarriRo事業部長 笠置泰孝氏は、AGVの走行方式はそれぞれの特性に応じた得意な搬送シーンがある一方で、運用上の課題もいくつか抱えていると指摘する。

 例えば、現在市場に出回るAGVの多くが採用するライントレースとSLAMは「ライントレースはAGVを高精度かつ安定的に走行させられる上、価格感も手ごろで導入しやすい。だが、走行ルートが固定化されてしまうため、ルートの再設定にも手間がかかる。このため、搬送シーンに応じた柔軟な運用が難しい。一方で、SLAMは柔軟な運用が可能だが、周辺環境のマッピングやティーチングに時間がかかる。また、マッピング後、周囲の障害物の位置が移動するなど環境変化が生じると、正常に走行することが難しくなる。ライントレースと比べると導入、運用コストも高くなる」(笠置氏)と指摘する。

多くのAGVが採用するライントレースとSLAMだが、課題も少なくない[クリックして拡大]出典:ZMP 多くのAGVが採用するライントレースとSLAMだが、課題も少なくない[クリックして拡大]出典:ZMP

 これらのデメリットを解消する走行方式として、ZMPはCarriRo Visual Trackingを開発した。画像認識技術によって床面のランドマーク(シール)を読み取り、そこから受け取った「停止」「直進」「(左右への)カーブ」などの走行コマンドに従い自律走行する仕組みである。導入環境に合わせて柔軟に設置でき、環境を問わず多様な動作を実現可能だ。またCarriRo Visual Trackingのシールは、ランドマークとして一般的に用いられる磁気テープよりも、安価で設置しやすいという利点もある。

ZMPが開発したランドマーク式の走行システム「CarriRo Visual Tracking」[クリックして拡大]出典:ZMP

 しかし、ランドマークにも問題はある。「シールを床面に貼るという仕様上、アスファルトなどの路面上で運用するには適さない。また、フォークリフトなどが頻繁に行き交いする場所では、シールが剥がれる恐れもある。また、配車や車庫入れなどの細かい動作をAGVに行わせるのには向かない」(笠置氏)。

 このように各走行方式は、得意とする搬送シーンがそれぞれ異なる。そこで笠置氏らは「ライントレースとSLAM、ランドマークの3つの走行方式の長所を組み合わせて、搬送シーンに応じて柔軟に切り替えられる仕組みを作れば、あらゆる場面に対応する自律走行が実現できるのではないか」(笠置氏)と思い付いた。こうした発想に基づいて、開発されたのがHybrid SLAMだったという。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.