溶接プロセスにおける課題について、パナソニックCNS 上席副社長 プロセスオートメーション事業部 事業部長でスマートファクトリーソリューションズ 会長の青田広幸氏は「溶接現場は熟練技能者による3K(勘、経験、根性)に頼った職場で、世界中で熟練者や後継者不足に困っているのが現実だ。また、これらの現場で起きていることが、経営層などでは理解できない状況が生まれている。これらをデータ化、見える化することで、安定的な加工現場を実現することができる」と語っている。
また、製造工程の中の「溶接」は全体のわずか数%以下だが、前後の関連するプロセスが多岐にわたり、前後の工程をフルプロセスで結んでいくということが重要になってくる。「パナソニックが従来行ってきたハードウェアの提供だけでは解決できない課題がある。これをデジタル技術を組み合わせることで、プロセス全体の生産性を高めることを目指す」と青田氏は語る。
「iWNB」は、具体的には産業用PCにインストールしたソフトウェアにより溶接ロボットのデータを収集する仕組みである。最大で32台のロボットをLANによって接続し、ロボット側とPC側の設定をするだけで簡単に溶接現場の見える化を実現できるという。収集できるデータについては「溶接の出力電流や電圧、モーターの稼働状況、ワイヤの送給量、短絡やガスの状況、不具合の発生など、約50種類のデータをリアルタイムに吸い上げることができる」(パナソニック スマートファクトリーソリューションズ 取締役副社長の浜本康司氏)。
閲覧画面としては、経営部門向けのKPI(Key Performance Indicator)画面、生産計画策定部門向けの生産進捗確認画面、保全部門向けの異常履歴画面などさまざまな職能・職責向けの画面を準備しており、目的に応じた解析を効率的に行うことが可能である。データの表示にはWebアプリケーションを採用しており同じネットワーク上のクライアントPCからはブラウザを使用して任意にアクセスできる。
メインターゲットは自動車、二輪、建設・インフラ業界としている。またビジネスモデルとしては「顧客の状況により変わるのではっきりしたことはいえないが、リカーリング型のビジネスモデルを想定している」(青田氏)とし、月額課金型のサブスクリプションモデルを検討しているという。
現状では、パナソニック製の溶接ロボットのみで使用でき、ロボットコントローラー「G III/WG III/WGH IIIシリーズ」を採用しているものが対象となるが「プロセス全体やトレーサビリティーを考えると、パナソニックの機器だけを対象にしているだけではだめだと考えている。『iWNB』の仕組みは、機器のソースコードやログデータを全て吸い上げないとできないものではなく、パナソニック以外の機器でも条件や必要なパラメータをすり合わせることで連携が可能だ。また、同様に現在は溶接工程のみを対象にしているが、溶接工程以外の作業などもつないでいくことを検討している」と青田氏は今後の方向性について述べている。
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