「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

コンセプトカーそのままに、日産の新型EV「アリア」は2021年発売電気自動車(2/2 ページ)

» 2020年07月16日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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OTAはマルチメディア以外にも対応

 インテリアも、アリア コンセプトに盛り込んだ提案を踏襲した。E/E(電子電気)アーキテクチャも、無線ネットワークによるソフトウェアアップデート(OTA:Over-The-Air)で機能を追加できる拡張性を持たせて新開発した。

大型ディスプレイ2枚でコックピットを構成(クリックして拡大)

 コックピット周りは12.3型の大型ディスプレイ2枚と、操作に合わせて振動するハプティクススイッチで構成されている。物理的なスイッチはなく、ハプティクススイッチはクルマの電源を入れるとアイコンが浮かび上がる。すっきりとしたインテリアを生かすため、ディスプレイの追加が必要な電子ミラーの採用は見送った。

 メーター用とインフォテインメントシステム用のディスプレイはシームレスに連携する。インフォテインメントシステム用の画面でスワイプ操作を行うと、メーター用のディスプレイに情報表示を移動させることが可能で、ドライバーの好みに合わせて表示する情報のレイアウトを変更できる。メーター用のディスプレイには、走行に必要な情報に加えて、ナビゲーション画面や音楽の情報などを表示できる。インフォテインメントシステム用のディスプレイは、スマートフォンのような感覚で直感的にタッチ操作できる。

 シームレスな体験を提供するため、コネクテッド機能も強化した。すでに北米では2017年から「アルティマ」でマルチメディア向けにOTAを提供してきたが、アリアではインフォテインメントシステム以外も対象にOTAを提供する。現時点では、乗り味を変えるドライブモードの追加やナビゲーションシステムの更新、ユーザーインタフェースのアップグレードを予定している。

 アリアに搭載する自動運転レベル2相当のプロパイロット2.0を、レベル3にアップグレードするサービスは行わない方針だ。レベル3ではドライバーが周辺を常時監視する必要がなくなるため、システム側で安全のために考慮する要因が増えるためだ。

デュアルバンクメモリ

インストゥルメントパネルはすっきりとしている(クリックして拡大)

 更新可能なソフトウェアを扱う主要なユニットには「デュアルバンクメモリ」を採用。サブメモリに停車中や走行中に新しいソフトウェアをダウンロードしてから、メインメモリと切り替えることにより、短時間でアップデートを完了させる。

 OTAは今後展開するコネクテッド機能を持つ車両を対象に、EVに限定せず搭載していく。コネクテッドによる機能の拡張性だけでなく、サイバーセキュリティの担保やプライバシーの保護、機能安全を両立した。

 アリアのインフォテインメントシステムはソフトウェアのソースコードで3000万〜4000万行の規模があるという。デュアルバンクメモリはこの規模を前提に、さまざまな機能を追加できる技術的な拡張性を提供する。

 コネクテッド機能はこれまでにも地域ごとのニーズを踏まえて提供しており、OTAで更新するソフトウェアも同様だという。例えば、北米では既に、スマートフォンでエンジンを始動したり、宅配の荷物を配達員が置くために遠隔でトランクを開けたりする機能を提供してきた。アリアに搭載したE/Eアーキテクチャは、こうした地域ごとのニーズにOTAで対応するための技術的な土台となる。

 音声エージェントは「Amazon Alexa」に対応。音声入力による操作で、音楽再生や天気予報の確認、家族などへの電話など車内のシステム操作が行えるだけでなく、車内から自宅の照明やエアコンなど家電を操作することも可能だ。また、自宅にあるAlexa搭載スマートスピーカーに話しかけるとアリアの充電残量などを確認できる。通信状況が悪い場合はオンボードの音声エージェントで基本的な操作は行える。

 スマートフォンと車両の連携も強化した。これまではリーフでも出発前にスマートフォンで行き先を設定してナビゲーションシステムに転送する機能はあったが、出掛ける直前でなければ利用できなかった。

 アリアでは、スマートフォン内のカレンダーアプリの情報を参照して先の予定に合わせた行き先の設定、車両への転送が可能になった。スマートフォンで行き先を設定する際には、道中でどのように電力を消費するか予測し、充電ステーションの立ち寄りも提案する。

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