3Dプリンタを活用した設計者の“働き方改革”デジファブ技術を設計業務でどう生かす?(2)(2/3 ページ)

» 2020年06月26日 10時00分 公開

3Dプリンタを設計現場に設置しよう!

 社内に3Dプリンタが導入されていても、設計以外の部署に設置されていては、許可を得る手続きに時間がかかり、使いたいときに気軽に使えません。これでは外部に依頼するのと変わらなくなり、設計者の業務効率化につながりません。

 せっかく3Dプリンタを導入するのであれば、“試作のスピード感”を早めましょう。設計者が帰宅する前に、その日作成した3Dデータの3Dプリントをスタートさせ、次の日の朝に出社したら、モノができていて、すぐに設計検証が行える――。このスピード感があれば、製品開発力や競争力が向上し、厳しい市場環境にも打ち勝つことができるのではないでしょうか。設計者もすぐに試作して確認できることで、安心して次の設計に進むことができます。

 一昔前は、3Dプリンタというと「積層造形装置」とも呼ばれ、オフィス内には置けないほど大規模な機器でしたが、最近ではオフィス内に置ける小型・省スペースの3Dプリンタも多くあります。

オフィス内における3Dプリンタ(いわてデジタルエンジニア育成センター内) オフィス内における3Dプリンタのイメージ(いわてデジタルエンジニア育成センター内) [クリックで拡大]

 “設計者1人に、3Dプリンタ1台”は極端な例だと思いますが、より良い製品を生み出し、品質向上、コスト削減、納期短縮を実現し、次につながるイノベーションを創出できる、そんな製品開発の現場を目指すのであれば、設計者が好きなタイミングで試作できる環境を構築すべきだと考えます。トライ&エラーを何度も繰り返すことで設計力は向上します。特に新人や若手の設計者にとって、3Dプリンタは失敗を経験して成長できる有効な教育ツールとなることでしょう。

 決して始めから、高価な3Dプリンタである必要はないと思います。安価な3Dプリンタから導入して活用していくというアプローチでもよいでしょう。もちろん、安価な3Dプリンタの場合、精度や品質は落ちますが、材料費も安く、使い方によっては、デザイン検証だけではなく、組み立て性やはめ合いなどの設計検証にも使うことができます。このあたりの話題は、今後の連載の中で詳しく紹介していきたいと思います。

 中には、安価な3Dプリンタのことを、製造業で使える「道具」としてではなく、個人で楽しむ「オモチャ」だと思っている方もいるでしょう。しかし、安価であっても十分な精度が出せ、設計検証に使える機種もあります。また、仮に設計検証に使用できなくても、遊びの中から面白いモノを作る、アイデアを具現化する道具として、その利用価値は十分にあるといえます。ぜひ、設計者のために“遊び場”を作ってあげてください。そこから創造的な発想が生まれ、新たなイノベーションにもつながるかもしれません。少しの余裕が、設計者を次のステージへと成長させてくれます。残業を減らすだけが働き方改革ではなく、楽しく仕事ができる環境を整えることも、立派な働き方改革ではないでしょうか。

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