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» 2020年05月13日 10時00分 公開

パナソニックが航空宇宙事業本部を発足!? 100年後は火星のくらしをアップデート宇宙開発(3/3 ページ)

[朴尚洙,MONOist]
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散発的だった航空宇宙関連の取り組み

 これらの採用実績は、パナソニック全社として取り組んだというよりも、カンパニーや事業部それぞれの取り組みの結果という側面が強い。出口会時代から活動に参加しているIS社 電子材料事業部 事業開発センター 事業企画部 事業開発課 主任技師の伊藤彰氏や寺岡氏は、かつて宇宙関連の事業開発に関わった経験があるが「当社での航空宇宙関連の取り組みは散発的なものだった」と声をそろえる。

 この背景には、パナソニックでは事業部それぞれの独立性が強く、その製品やサービスの採算性が厳しく求められることに要因があった。政府プロジェクトが中心だった時代の宇宙関連での開発はどうしてもコストが高くなる上に、納入先に広がりもないため事業化にストップが掛かってしまうのだ。

 実際にHTVに採用されたLED照明についても、4〜7号機に使う分まで納品した後に「宇宙船内向けのLED照明はまだまだニーズが少なく事業化が難しい」としてプロジェクトを終了している※)

※)JAXA産業連携事例集「AEROSPACEBIZ

 ただし、宇宙産業を取り巻く状況は近年大きく変化しつつある。アーカイバル・ディスクやハンディ掃除機をISSに届けるロケットを打ち上げているSpaceXに代表されるように民間からの参入が相次いでいるからだ。

 宇宙産業の市場規模は2016年時点で38兆円という調査結果がある。このうち28兆円が人工衛星関連であり、さらにその約半分がハードウェア系だ。出口氏は「ここにさまざまな機器や部品、材料を納入できると考えている。以前とは違って、宇宙機器はCOTS(Commercial Off-The-Shelf)として民生や車載で用いられている部品や材料を採用する事例が増えてきている。2010年ごろから、車載用であれば問題なく採用できるという流れはできつつあるようだ」と意気込む。実際に、IS社の手掛ける電子部品や電子材料は、ティア1サプライヤーを経由して利用されている可能性が高い。

 そこで航空宇宙事業本部としては、これまで宇宙産業をけん引してきた政府系、進展が著しい民間系それぞれのプロジェクトに、これまでパナソニックから納入実績がある製品や技術をしっかりと提案していくことで事業化の端緒にしたい考えだ。「1回限りの実績もあるかもしれないが、それでも実績は実績だ。また、パナソニックの各事業部には航空宇宙関連に取り組む中でいろいろとため込んだものがある。それらの中にはかなり可能性があるのではないか」(伊藤氏)。

 しかしパナソニックでは、これまで各事業部の独立性の高さが故に全社として横串を通した取り組みが難しいといわれてきた。宮島氏は「2011〜2012年から始まった『One Panasonic』という取り組みで、組織の横串を通した活動はやりやすくなっている。航空宇宙事業本部の活動にもそのノウハウを取り入れていく」と語る。寺岡氏も「最近では、社内向けのR&D展示会に航空宇宙事業本部のような有志活動も参加できるようになり、経営陣に提案できる環境が整いつつある」と説明する。

部材メーカーが第1ステージ、第2ステージで宇宙の“くらし”を支える

 実績ベースから着実に事業を積み上げていくことが、航空宇宙事業本部の第1ステージになる。2016年時点で38兆円という宇宙産業市場は、2030年には70兆円まで拡大すると予測されているが、その成長市場の中で基本的には部品・材料メーカーとして地位を一歩ずつ高めていくという戦略だ。

 宇宙産業向けの部品・材料メーカーというと地味に聞こえるが、航空宇宙事業本部のスコープとしてこれは第1ステージにすぎない。月や火星への移住が進んでいる可能性がある100〜200年後の第2ステージに向けて、宇宙産業との関わりを積み重ねて行くことになる。出口氏は「そのとき、パナソニックが展開してきた“くらし”の技術が役立つと考えている。照明や家電、家を作るといった“くらし”の技術を宇宙に展開できれば」と将来像を描く。

 宇宙事業の話ばかりになったが、航空宇宙事業本部としている以上、航空分野も視野に入る。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で航空業界は厳しい状況にあるが、将来的には回復するだろう。そこで、宇宙産業と同様に、車載で実績のある技術を提案していきたい」(出口氏)という。

 最後に、出口氏とともに航空宇宙事業本部をけん引する寺岡氏、宮島氏、伊藤氏のコメントを紹介しておこう。

 「パナソニックの、そして日本のモノづくりの素晴らしさは宇宙でも生かせる」(寺岡氏)

 「転職でパナソニックに入社したが、さまざまな製品や技術を生かし切れていなくてもったいないと感じることがあった。今回の航空宇宙事業本部の取り組みが、パナソニックの可能性を引き出す先行事例になればと思う」(宮島氏)

 「創業から100年と少しの間、パナソニックは地上の生活を支えてきた。これからの100年は宇宙の生活を支えられるようになりたい」(伊藤氏)

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