三菱重工業は2019年7月12日、東京都内で「2019年度事業戦略説明会」を開催し、リージョナルジェット機「Mitsubishi SpaceJet(旧MRJ)」の開発概況や民間機、防衛宇宙事業の展望を説明した。
三菱重工業は2019年7月12日、東京都内で「2019年度事業戦略説明会」を開催し、リージョナルジェット機「Mitsubishi SpaceJet(旧MRJ、以下SpaceJet)」の開発概況や民間機、防衛宇宙事業の展望を説明した。
同社の航空・防衛・宇宙ドメインにおける2018年度の売上収益は6775億円で、前期比407億円の減収。民間航空機と宇宙機器の売り上げ減が響いた。事業損益は374億円の赤字だが、前期比260億円の増益を果たした。MRJ事業の研究開発費が減少したことが利益の押し上げ要因となった。2020年度には売上収益を7200億円と見込み、事業損益の黒字化を狙う。
三菱重工は2020年半ばに、ローンチカスタマーであるANA(全日本空輸)へSpaceJet初号機の納入を目指している。同社でシニアフェロー MRJ事業部長を務める高口宙之氏は、初号機納入に向けて航空当局が航空機の安全性を審査する型式証明(TC:Type Certification)の取得に注力していることを強調した。
米国ワシントン州モーゼスレイクで4機体制により実施中の試験飛行は2019年6月末の時点で累計3000時間を超え、これまでエンジン&APU(補助動力装置)、極寒、防氷システム、燃料、アビオニクスの領域でTC試験を進行、完了したという。また、名古屋で行っている疲労強度試験は、同年7月4日に1万サイクルを超えTC取得要件を満たしたことも明かした。同社は試験体制強化のため飛行試験機を追加投入するとし、最大7機体制でTC取得に向けて試験飛行を継続する。また、操縦士養成に向けたフライトシミュレーターも開発を進め、ANAへ納入したとする。
また、SpaceJetの製品ラインアップは、座席数が76〜92クラスのスタンダードモデル「M90」、M90をベースに新設計する座席数65〜88クラスの米国スコープクローズ準拠モデル「M100」の展開が決定している。M100は2023年の納入を目指しており、同機種がSpaceJetのメインストリームを担うとの認識を示した。また、M100をストレッチした座席数100クラスの「M200」も開発検討段階にあるという。
同社はSpaceJetの量産体制確立と同時にカスタマーサポート体制の構築も急ピッチで進めており、2019年6月にボンバルディアからリージョナルジェット機「CRJ」事業の営業マーケティング、保守、改修といった機能を買収した。現在、各国当局の審査を受けており、2020年上半期のクロージングを見込む。
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