【緊急調査】新型コロナ対策支援における3Dプリンタ活用メーカー5社に聞いた(3/3 ページ)

» 2020年04月09日 10時00分 公開
[八木沢篤MONOist]
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パートナーやコミュニティーと連携したネットワーク構築がキーに

 ここまで、海外/国内における3DプリンタメーカーによるCOVID-19対策支援の取り組みを紹介してきた。先行する海外の取り組みを見て分かる通り、プロトタイプの提供など、支援開始までのスピード感が圧倒的に早い。それが3Dプリンタならではの強みであるとともに、各社がパートナーやコミュニティーとの連携を強め、支援に向けたネットワークを構築している点にも注目しておきたい。

 また、同時に世界中で支援の輪を広げるために、各社が専用Webサイトなどを設け、情報発信やデータ共有、あるいは設計・製造に関する相談、ボランティア募集などまで行っている。そこには、こうした世界的危機に直面した今こそ、3Dプリンタの強みを生かし、3Dプリンタだからこそできる価値を提供したい、という使命感が表れている。

 3Dプリンタで製造したものを医療現場で使うとなると、認証の取得や規制といった壁がつきまとう。しかし、本稿でお伝えした通り、海外では積極的に3Dプリンタ製の医療関連部品の臨床評価を行っており、実用化されているものも出てきている。日本国内においても、米国、スペイン、イタリアのような医療危機(医療崩壊)、防護具や人工呼吸器の不足などが懸念されているだけに、先行する海外での実績や成果を踏まえつつ、従来の認証や規制にとらわれない柔軟な対応が求められるのではないだろうか。

3Dプリンタだからこそできる価値提供

 最後に、各メーカー担当者から寄せられた「世界的危機に直面した今、3Dプリンタだからこそできる価値提供」についてのコメントを紹介する[回答の返信順]。

アイデアをすぐカタチにできること、必要なものを必要な時に都度生産できることが3Dプリンタがもたらすメリットだ。世界中に6万台以上あるFormlabsの3Dプリンタを活用できれば、単なる製造コストだけでなく、必要な場所に届けるための輸送コストや所要時間を大幅に削減でき、新型コロナウイルスの検査や人工呼吸器のさらなる有効活用など、多くの人々に寄り添うことも可能になる。【Formlabs 新井原氏】

設計データを共有することにより開発検討に要するリードタイムを大幅短縮できること、急な需要発生に対して国内の複数ユーザーと連携することによって、短期間での量産化が可能となることが挙げられる。今回の新型コロナウイルス感染症の流行に関わらず、人やモノの移動に制約がある今日のような状況に際しても、分散型かつローカル型の生産ネットワークによって柔軟な供給体制確立が可能となるアドバンテージは大きい。【JSR 澤田氏】

市場にはさまざまな3Dプリンタがあるが、HP Jet Fusionは、生体適合性に優れた量産向け材料を高速で造形できるという特長を備えている。今回のような緊急性の高い状況において、必要な部品を、スピーディーに設計、検証できるだけではなく、そのまま実際に最終製品として使用することも可能だ。また、3Dデータを共有することで、部品を必要とする地域のすぐ近くで造形することが可能となり、サプライチェーンへの影響を最小限に留めることができる。【日本HP 秋山氏】

テクノロジーソリューションとしての積層造形(AM)により、プロトタイピングと設計の迅速な反復が可能になり、従来の製造方法よりも大幅に短い時間での生産が実現できる。また、この価値により得られる顕著な利点の1つとして挙げられるのは、分散型製造と、複雑なロジスティクスと私たちにはない時間を必要とする集中型サプライチェーンだ。AMはスピードのメリットをもたらすが、医療機器を作成していることを念頭に置く必要がある。また、規制要件に準拠し、患者や医療提供者にとってこれらの機器の安全性と有効性を確保することが重要だ。【3D Systems Ellis氏】

部品や代替品が急に必要になったとき、迅速に代替部品を提供できる最も確実なツールが3Dプリンタだ。材料や3Dプリンタの精度によって、十分な強度を持つ部品を提供でき、大型の3Dプリンタであれば小型の部品をある程度の数量、同時に造形できるため、急な量産ニーズに対しても対応可能である。【ストラタシス 担当者】

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