一方、国内においても3Dプリンタを活用したCOVID-19対策支援の動きが少しずつ出始めている。
3Dプリンタメーカーではないが、非常に大きな反響があったのは、3Dプリンタ事業などを手掛けるイグアスが公開した3Dプリンタ製マスク(3Dマスク)だ。こちらは深刻なマスク不足を背景に、その解決策の1つとして開発したもので、柔軟性と耐久性のあるナイロン粉末材料を使用し、軽量で、水や洗剤で洗浄をすることで繰り返し使用できるのがポイントだ。この3Dマスクの製造に使われているのが、3DシステムズのSLS方式3Dプリンタ「ProX 500」と、XYZプリンティングの同方式3Dプリンタ「MfgPro230 xS」である。
また、国立病院機構新潟病院や広島大学などのワーキンググループが、3Dプリンタで製造できる人工呼吸器の代用器具を開発し、3Dデータを無償公開したことで話題となった。現在、医療機器認証の取得と実用化を目指すプロジェクトを発足し、支援を募っている。
こうした活動の輪が国内で広がる中、3Dプリンタメーカーの動きはどうだろうか。
Carbonの国内展開を支援するJSRでも、COVID-19対策に向けた貢献活動の検討が始まっているという。「2017年2月から継続している、Carbonの3Dプリンティング技術を社会実装し、モノづくりの変革を推進するための異業種交流会(Flexible Manufacturing Forum)の中で、Carbonの技術でデザインされたフェイスシールド部品の提供可能性を検討している。現在、某病院からフェイスシールドの製造について打診されており、初期サンプルの早期提供に向けて動き出している」(JSR Carbon事業推進部 部長の澤田安彦氏)。
検討中のフェイスシールドは、Carbonの「M2」プリンタと液状樹脂材料の活用を前提とし、その他の構成部品については調達先を選定する必要があるという。また、供給体制を構築するためには、M2プリンタによる量産をサポートしてくれるパートナーだけでなく、シールド部の加工業者などの協力も必須となることから、「今後、必要に応じて複数のパートナー企業に協力を仰ぐ予定だ」(澤田氏)とする。
また、HPがグローバルで展開するデジタルマニュファクチャリングネットワークの認定パートナーであるSOLIZE Productsは、HPと協力し、「HP Jet Fusionシリーズ」を用いて、医療関連の重要部品などの製造を支援する考えだ。
さらに、3Dシステムズは先行する海外事例やその成果を生かし、日本国内におけるCOVID-19対策に向けて貢献できることを検討している最中だという。同じくストラタシスについても、海外での実績を踏まえ「具体的に貢献できる事案があれば、積極的にサポートしていきたい」(ストラタシス担当者)としている。
先行する海外事例ほど、具体的な取り組みや医療機関との連携についての話題は多くないが、各社の海外での取り組みを基にした経験やノウハウは、必ずや日本国内でのCOVID-19対策支援に役立つに違いない。後述する認証取得や規制の壁はあるものの、3Dプリンタメーカーとともにやれることはたくさんあるだろう。
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