石川・金沢からは、冨木医療器の医療機器医薬品配送管理システムの開発を北陸通信ネットワークと金沢エンジニアリングシステムズが担当した事例が紹介された。同システムは、倉庫から出荷する医療機器や医薬品の品質管理を納品に至るまで徹底し、安心安全な医療の提供を目指すものだ。商品とともにクーラーボックスに京セラのGPSマルチユニットを入れておくことで、倉庫から配送車、病院や薬局の保管庫まで、温度や位置情報を見える化できる。また、他社クラウドからAzureへの移行によりコストを5分の1に抑えられることも大きなメリットになっている。
中部の事例では、名古屋大学の省エネルギー化に向けた取り組みに、ナレッジコミュニケーションがソリューションを提供した。IoT人感センサーを使って電力量消費量をリアルタイム分析し、電力デマンドやベース電力の寄与度の高い場所を特定。大学施設全体の省エネ化につなげているという。
IoTやAI、クラウドをはじめとするIT活用に対して、製造業を中心とする日本企業は全般的に消極的といわれて久しい。「人が何とかしてしまうことで、IT化が前に進まないという実情があった」(福田氏)。しかし2018年ごろから、IT活用に取り組まなければ海外との競争に勝てないという意識が強くなっており、地域版IoTビジネス共創ラボの活動の手応えにもつながっている。
福田氏は「かわさきの大矢製作所は、ある意味で町工場がIoT活用に取り組む典型的な事例といえるだろう。同社の2代目社長が自身で川崎市の補助金を申請するなど、強い意識を持って取り組んでいた。今後も各地域で同様の事例が続くのではないか」と強調する。
なお現時点で、地域版IoTビジネス共創ラボは西日本では設立されていない。ただし「2020年内には西日本で立ち上げられそうだ」(福田氏)としており、地域に根差したIoTビジネス共創ラボの活動が全国に広がっていくことになりそうだ。
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