過去最大規模の開催となった「2019国際ロボット展(iREX2019)」。本稿では、サービスロボットゾーンの展示を中心にレポートする。川崎重工業とトヨタ自動車のヒューマノイドロボットが進化していた他、遠隔操縦に用いるアバターロットの他、協働ロボットがハンコを自動で押印するロボットなどに注目が集まった。
「2019国際ロボット展(以下、iREX2019)」が2019年12月18〜21日、東京ビッグサイトで開催された。同展示会は2年ごとに実施されているもので、今回が23回目。出展社数は前回の612社から637社に増加し、過去最大規模での開催となった。本レポートではその中でも、主にサービスロボット関連の話題を中心にお伝えしたい。
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まずはヒューマノイドロボットの展示から紹介しよう。前回のiREX2017で初めて登場した川崎重工業の「Kaleido」(iREX2017ではRHP:Robust Humanoid Platformとして出展)とトヨタ自動車の「T-HR3」は、それぞれアップデートを果たし、今回も来場者の注目を集めていた。前回の展示内容については、以下の過去記事も参考にしてほしい。
川崎重工業のKaleidoは、「転んでも壊れない」ロバスト性を目指したロボットである。2足歩行ロボットは本質的に転倒しやすいが、等身大のサイズにもなると、ほぼ転倒=故障となる。そのため天井からつるすなどして、バランスを崩しても転倒しないようにしているのだが、こういった制約が研究を進める上での障害になっていた。
Kaleidoは、一般的な回転型のモーターではなく、直動型のモーターを採用しているのが大きな特徴。頑丈なフレームの周囲に直動モーターが付くという、人間の関節に近い構造(そのため“筋骨格型”とも呼ばれる)とすることでロバスト性を高めた。
iREX2019では、最新型のVer.6を披露。前回のVer.4は、コントローラーとバッテリーが外部に置かれていたが、Ver.6では内蔵されており、自立した動作が可能となっている。Ver.6の身長は178cm、体重は85kg。プロテクターを金属製から樹脂製に変えた他、軸構成を見直すなどして、重量は同程度に抑えた。
さらに、足元に力覚センサーを追加したことで、安定した歩行が可能になった。頭部には3Dカメラも追加されており、足元を確認しながら段差を上るようなこともできる。
展示ブースでは、災害対応を想定したデモを行っていた。災害対応は、Kaleidoが将来の応用先の1つとして期待している分野である。等身大であれば、人間向けに作られている施設に入って活動しやすい。2足歩行は転びやすいものの、足場が悪いところでは両腕を使った4足歩行にすればよく、汎用性は高い。そしてロバスト性は何より重要だ。
Ver.6はまだ全て電動のモーターを使っていたのだが、今後は油圧化も視野に入れる。油圧であれば、ロバスト性はさらに向上し、パワーも強力になる。ブースでは、下半身を油圧化した試作機によるデモが行われていた。時間中、ひたすら鉄板を蹴り続けていたのだが、これでも全く壊れないというのは驚きだ。
この試作機では、シリンダーやポンプなどを全て一体化したコンパクトな油圧アクチュエーターが使われていた。外部からの油圧配管が不要なため、電動と同じような簡単さで利用できるのは大きなメリットだ。これ単体でのニーズもかなりあるのではないだろうか。
Kaleidoはまず、研究用として提供していく方針。オープンプラットフォームとして、広く大学や企業で使ってもらうことを目指している。
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