2019 国際ロボット展 特集

壊れない2足歩行ロボットが進化、ハンコ自動押しロボの実力は?――iREX2019サービスロボットレポート2019国際ロボット展レポート(2/5 ページ)

» 2020年02月06日 10時00分 公開
[大塚実MONOist]

アバターロボットがバーテンダーに

 トヨタ自動車の「T-HR3」は、マスタースレーブ方式で遠隔操縦できるロボットだ。身長は154cm、重量は75kg。全身に32軸+10指の自由度を持つ。人間は「マスター操縦システム」に搭乗。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)でロボットからの映像を見ながら、まるで自分がロボットに乗り移ったかのような感覚で操作できる。

「T-HR3」は操縦者と同じように動く 「T-HR3」は操縦者と同じように動く。直感的に操作できるだろう(クリックで拡大)

 同社の第3世代ヒューマノイドロボットとなるT-HR3は、新開発のトルクサーボを採用した点が第2世代までとの大きな違いになる。これにより関節を柔軟に制御し、周囲との接触時にも外力を受け流して安全に作業を継続できる。また、外力に対し全身を使ってバランスを維持する「全身協調バランス制御」も搭載した。

 マスター操縦システムは、HMDの他、腕を制御する「マスターアーム」と、移動を制御する「マスターフット」で構成される。今回、ロボット側には大きな変更はなく、強化されたのは主にこの操縦側だ。

新搭載のマスターフット 新搭載のマスターフット。足の動きでT-HR3の移動をコントロールする(クリックで拡大)

 マスターアームは、ロボット側からの反力をフィードバックするバイラテラル制御になっているため、操縦者は物体を持ったときに、その感覚までリアルに感じることが可能。前回、指はデータグローブで動かしていたが、今回はバイラテラル制御の「マスターハンド」になり、指先の細かな感覚まで再現した。

手にはマスターハンドを装着 手にはマスターハンドを装着。リアルな操作感がさらにアップした(クリックで拡大)

 展示ブースのデモでは、T-HR3がバーテンダーの仕事にトライ。シェイカーの小さなフタを閉めるなど、カクテル作りにはかなり細かな作業があったが、見事成功し、最後には手品まで披露していた。こういった指先の感覚が必要な作業には、マスターハンドの効果が大きかっただろう。

T-HR3の動作デモ。遠隔操作により、将来は出勤する必要がなくなるかも?(クリックで再生)

 同社はT-HR3を、人間の生活をサポートするパートナーロボットとして開発している。まだ研究開発の段階のため、すぐ実用化されるようなものではないが、将来的には、家庭、医療、建設、災害対応、宇宙といった極限環境などで応用することを想定している。

将来は家事もアバターロボットが代行?

 まだ開発中なものの、面白かったのがMira Roboticsの「ugo」。これは、遠隔操縦可能なアバターロボットを使い、人間の作業を代行するというもの。ロボットの身長は90〜160cm。カメラと両腕を備える他、移動機能もあるので、映像を見ながら、さまざまな作業が可能だ。展示ブースでは家事を代行するデモを行っていた。

家事代行のデモ。Oculusのコントローラーでロボットを操作している(クリックで再生)

 現在のAI(人工知能)技術では、まだ汎用的な仕事を完全自律で行うことは難しいが、判断する部分を人間が担当すれば、その問題は回避できる。アバターロボットなら現場まで移動する必要がないので、1人のオペレーターが操縦するロボットを切り替えながら、複数箇所の仕事をこなすことも可能だろう。

 ただし、家事は遠隔操縦でも技術的にまだ難しく、実用化の時期は未定とのことだったが、同社はビル警備の実証を品川で進めているところだ。料金体系については未定なものの、2020年後半にも事業化する計画である。

ロボットアームを使えば、エレベーターのボタンも押せるという ロボットアームを使えば、エレベーターのボタンも押せるという(クリックで拡大)

アバターロボットで世界中を体験

 H2Lは、NTTドコモと共同開発したカヤックロボットのデモを行っていた。このカヤックは、映像を見て揺れを感じながら遠隔操縦できる。高速で低遅延な5G通信を利用して、例えば東京にいながらにして米国で川下りを体験するようなことが可能になるという。実際に川下りをするわけではないので、体力に自信がない人でも安心して楽しめるだろう。

左の操縦席から、右のカヤックを動かす 左の操縦席から、右のカヤックを動かす。カヤック以外への応用も可能(クリックで拡大)

 カヤックには、人間の代わりにカメラを設置。無人で移動できるよう、水中モーターも搭載する。操縦者は、HMDを装着し、映像を見ながらパドルを動かす。カヤックの揺れは操縦者のシートに連動しており、臨場感の高い体験が可能だ。観光産業の他、建設現場での活用も想定しているとのこと。

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