最後に触れておきたいのが、旋盤加工だけでは出せない精度を実現する「研削加工」です。丸モノの研削には主に2つあり、1つが「円筒研削」、もう1つが「センターレス研削」です。いずれも旋盤加工以上のμm単位の寸法精度と面粗さを実現するものですが、精密さを求める回転部品には、圧倒的に円筒研削が適しています。
円筒研削には「円筒研削盤」という専用の機械を使います。これは円盤状の砥石を回転させて丸モノの外周とテーパー面を研削する工作機械です。精度的にはセンターレス研削盤よりも高精度の加工が行えます。内径研削には「内面研削盤」という別の機械を使います。
仕上げに円筒研削や内面研削を用いる場合、旋盤加工の段階で、研削で除去される分の「取り代」を付けた状態で仕上げておき、円筒研削で寸法精度と面粗度を仕上げるという流れになります。
以下、円筒研削のサンプルです。こちらは金型部品、「パンチ」の外径研削品です。
こちらは、オスとメスの、テーパーあわせ内径・外径研削品です。
参考までに、円筒研削とセンターレス研削の違いをざっくりまとめてみました(図12)。
最近は加工物の段差などに対応できる「5軸NCセンターレス研削盤」もありますが、汎用のセンターレス研削盤は加工物をチャックで固定しないために、旋盤加工の段階で溝やR、段差を持つ物は基本的に対応できません。円筒研削盤は、加工物の両端をセンターでチャックしているので、段差や溝があっても支障なく研削できるところも1つの利点です。
次回は、切削加工の世界の続きとして、「フライス加工」と「マシニングセンター加工」の技術を取り上げます。お楽しみに! (次回に続く)
藤崎淳子(ふじさきじゅんこ)
長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余(うよ)曲折の末、2006年にMaterial工房・テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“一人ファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組み立て、納品を一人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンター加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。
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