“丸モノ”を削り出す、切削の代表格「旋盤加工」の技術ママさん設計者が教える「設計者のための部品加工技術の世界」(4)(1/3 ページ)

設計者でも知っておくべき部品加工技術をテーマに、ファブレスメーカーのママさん設計者が、専門用語を交えながら部品加工の世界を優しく紹介する連載。第4回は、切削の代表格である「旋盤加工」について取り上げる。

» 2020年01月17日 11時00分 公開

 皆さんこんにちは! Material工房・テクノフレキスの藤崎です。

 前回紹介した抜き型技術はいかがでしたか? 「『トムソン型』や『ピナクルダイ』という名称すら初めて聞いたぞ」という方もいらっしゃったのではないでしょうか。

 “材料を抜く加工”というと、「金型を作ってプレス加工!」とイメージされる方が多いと思いますが、この加工法が有効ではない材料も存在するのです。こうした、金属のプレス加工と同じ方法では加工困難な材料でも、思考を変えることでより安く、早く、美しく抜くことができる――それが抜き型なのです。

 抜き型の用途は紙器ばかりではありません。むしろ、機械部品や電子部品の中には、抜き型による加工が欠かせないものがあることを覚えておいてください。

機械部品の製作でおなじみの「切削加工」

 さて、今回は機械部品の製作に最も多く用いられる、切削加工の技術に話を移します。モノを動かすからくりには、さまざまなモーションパターンがあります。それらを組み合わせた結果が複雑な機構になろうと、基礎となるモーションは「回転運動」なのです。そこを意識しながら機械部品を観察していくと、軸状、筒状、リング状、円盤状のものが多く見受けられることに気付きます。さらに、軸や筒といった基本形状に加えて、外周に切り欠きや穴を持つ部品やカム溝を持つ円筒部品など、実にいろいろなものがあります。この類の部品をひっくるめて、加工現場では「丸モノ」と呼んでいます。そして、これら「丸モノ」を削り出す加工方法が、今回取り上げる「旋盤加工」です。

“丸モノ”を削り出す「旋盤加工」

 旋盤は工作機械の代表格の1つで、高速回転させた丸棒または円盤状の材料の外周から、作りたい形状に応じた刃物を当てて切削加工する機械です。一般的な加工種類としては、面削り、中ぐり、穴あけ、突切り、ねじ切りなどがあります。加工現場では旋盤を「汎用(はんよう)機」と「NC機」に大別し、さらにNC機は「NC旋盤」「複合旋盤」「CNC自動旋盤」らに区別して扱われます。どの種類の旋盤にも長所と短所がありますから、加工したい部品形状と必要数に応じた機種の見極めが必要になります。それでは、旋盤にはどのような種類があるのかを見ていきましょう。

ベンチレース

 まず、ごく単能な「ベンチレース」です。ベンチレースの“ベンチ(Bench)”は「作業台」、“レース(Lathe)”は「旋盤」と訳すことができます。すなわち、これは卓上旋盤という種類になります。機械が小ぶりなので、小さな部品の製作や、量産のシャフト部品のバリ取りをする時にも利用されます。

図1 卓上旋盤として知られる「ベンチレース」 図1 卓上旋盤として知られる「ベンチレース」[クリックで拡大]

 ベンチレースは、図2に示す「コレットチャック」を使って加工物をくわえて加工します。コレットチャック式では、加工物の外径ごとにコレットチャックを交換するという手間が掛かりますが、材料を安定して把握できるので「芯」が出やすい利点があります。回転シャフトなどは芯がぶれていると正しく機能しませんから、“材料の把握は旋盤加工の最大の肝”と覚えておきましょう。

図2 ベンチレースに欠かせない「コレットチャック」 図2 ベンチレースに欠かせない「コレットチャック」[クリックで拡大]

普通旋盤

 次に、ベンチレースの親玉的存在の「普通旋盤」です。この機械は、コレットチャックではなく、「スクロールチャック」と呼ばれる爪で加工物を把握します。先ほどのベンチレースも含めて、汎用旋盤の加工では、軸方向(Z)の送りハンドルと径方向(X)の送りハンドル、これら2つの目盛りを見ながら加工していくので、必要なのはX軸とZ軸の2軸だけということになります。つまり、外・内径切削、ねじ切りや溝入れ、切断などの2次元的な加工に向いています。なお、操作は手動のため、形状にテーパーやRを含む部品の加工には不向きです。というか、人間がやることとしては現実的ではありません。

図3 普通旋盤 図3 普通旋盤[クリックで拡大]

 旋盤で使う刃物は「バイト」と呼ばれるものがほとんどです。バイトは、四角い軸の先端に「チップ」と呼ばれる刃を取り付けたものです。チップの取り付けにはロー付けタイプスロアウェイタイプなどがあり、被削材別、加工目的別にチップの材質と形状も多様にあります。このバイトを仕込んだ台が「刃物台」です。ちょうど図4赤色○で示した部分がバイトです。この複数のバイトをどのように使うかですが、例えば、面削りからねじ切りに工程を移したいとき、手動でこの刃物台を回して工具をチェンジするわけです。

図4 刃物台に仕込まれた「バイト」(赤色○部分) 図4 刃物台に仕込まれた「バイト」(赤色○部分)[クリックで拡大]
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