普段あまり意識することはないかもしれませんが、日常生活の中でも抜き型による加工を目にすることがあります。例えば、前回登場したペーパークラフトなどもその代表例です(図4)。
その他、事務用品でおなじみのラベルシールも抜き型なしには加工できません(図5)。
トムソン型による抜き加工の方法は、次の2通りになります。
抜き加工に特化した専用の機械なので、もともとストローク長が短く、判を押すように素早い連続抜きが可能です。ワークエリアが広いので、面積の大きな材料をフラットにセットできます。また、プレス時は“下から上”に動きます。
一般的なプレス機や卓上プレスでも、型の固定を工夫することでトムソン抜きが可能です。ただし、プレス機の仕様上、面積の大きな材料の加工にはあまり向きません。
トムソン型は、紙、接着層を持つフィルム、ゴムシート、スポンジといった、通常のプレス金型ではスムーズな作業がしにくい、薄くて柔らかな材料の外形加工に最適です。これは、プレス金型による加工原理が「上下の刃で挟んで断ち切る」のに対し、トムソン型の加工原理が「片一方から刃を当てることによるせん断」だからです(図7)。
なお、抜き型もプレス金型と同じように「単発」と「順送」の工程を組むことが可能です。それによって、シンプルな形状のフィルムやマット、パッキンから、複雑形状の電子機器産業向けの部品まで、多岐にわたる部品製作に対応できます。
主に筆者が抜き型のお世話になっているのは、図8のようなフレキシブル基板の加工です。フレキシブル基板そのものと、前工程のカバーレイ加工の両方で抜き型を用います。カバーレイとは、フレキシブル基板に積層するレジスト代替フィルムのことで、接着層があります。そのため、シールの打ち抜きに用いられる抜き型が最適なのです。なお、基板の外形線部分には銅箔(はく)層がありませんから、刃へのダメージの心配は不要です。PET(ポリエチレンテレフタレート)製の補強板ごとしっかりと抜くことができます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.