AWSがF1のオーバーテイク増に貢献? EC2で次世代エアロを高速解析CAEニュース

Amazon Web Servicesは2019年12月2日(現地時間)、フォーミュラ・ワン世界選手権(F1)を運営するFormula One Groupと合同で、先行車のF1マシンが発生する乱流が後続マシンの空力性能に与える影響を流体解析したと発表した。

» 2019年12月06日 11時30分 公開
[松本貴志MONOist]

 Amazon Web Services(AWS)は2019年12月2日(現地時間)、フォーミュラ・ワン世界選手権(F1)を運営するFormula One Groupと合同で、先行車のF1マシンが発生する乱流が後続マシンの空力性能に与える影響を流体解析(CFD)したと発表した。解析結果は2021年シーズンから導入される技術規則の策定に役立てられた。オーバーテイクしやすいマシンの空力設計とすることで、さらなる白熱したレース展開が期待できるとする。

2021年シーズン技術規則にのっとったF1マシンのイメージ(クリックで拡大) 出典:FIA

 現代のF1マシンは、ウイングやバージボード、ディフューザーなど空力的付加物によって得られるダウンフォースが最大のパフォーマンス差別化要因となっている。しかし、複数のマシンが前後に接近して走行する場合、後続マシンのダウンフォースが失われやすくオーバーテイクが困難になるという課題がある。現行の技術規則では、先行マシンに接近する後続マシンはダウンフォースを最大で50%失うとの試算もある。オーバーテイクを促進し、より白熱したレース展開を実現するためには、後続マシンのダウンフォース損失を低減させる必要があった。

 このダウンフォース損失を減らすために、Formula One GroupはCFDを用いて先行マシンの乱流が後続マシンのダウンフォース生成に与える影響を調査するプロジェクトを立ち上げた。オープンソースの流体解析ツール「OpenFOAM」をAmazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)のc5nインスタンス上で実行し、5億5000万を超えるメッシュモデルを1150超のvCPU(仮想プロセッサコア)で処理した。AWS活用により解析時間が削減でき、以前の解析プロジェクトと比較して平均で約70%短縮できたとする。

 プロジェクトは6カ月間にわたって行われた。同プロジェクトから得られた洞察により、2021年から導入される技術規則では新たなフロントウィング形状、簡素化されたサスペンション構造、新たなリアエンドレイアウト、フロア、フロントタイヤで発生する乱流を制御する「ホイールウェイクコントロールデバイス」などを採用する。これらの工夫により、前後マシンの車間が1台分しかない場合であってもダウンフォース損失が15%にまで抑えられるという。

2021年シーズンF1マシンのイメージ(クリックで拡大) 出典:FIA
2021年シーズンF1マシンのイメージ(クリックで拡大) 出典:FIA

 F1の技術面を統括するCTO(最高技術責任者)のパット・シモンズ氏は「2番手を走るマシンを設計するチームはいない。一方で、このCFDプロジェクトは先行マシンに続いて走行するマシンがどのように機能するかを検討していた。 AWSを利用して、マルチカーシミュレーションを行うことで、驚くべきほどの空力的複雑性を理解することができた」とコメントしている。

 今後、最大2300vCPUまでアプリケーションを拡張する予定だ。Amazon SageMakerなどの機械学習ツールを導入し、さらなるマシンパフォーマンスの最適化を行う計画があるという。

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