富士ゼロックスと慶應義塾大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボは、3Dプリント用データフォーマット「FAV(FAbricatable Voxel)」の仕様を拡張し、デジタルモノづくりを支える3Dデータ基盤として構築したことを発表した。
富士ゼロックスと慶應義塾大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボは2019年11月21日、文部科学省COI(Center of Innovation)プログラムの一環として、2016年に共同開発した「世界初」をうたう3Dプリント用データフォーマット「FAV(FAbricatable Voxel)」の仕様を拡張し、デジタルモノづくりを支える3Dデータ基盤として構築したことを発表した。
これまでFAVは、3D CADで設計したデータに加え、立体物の内部構造、色、材料、接合強度などを含めた複雑な3次元情報を保持できる3Dプリンタ用データフォーマットとして知られてきた。今回、新たに3Dプリント以外の強度を表す構造解析データなど、さまざまな情報を扱えるよう仕様を拡張(バージョン1.1)し、モノづくりプロセスにおける3Dデータの一元管理を可能とした。
例えば、3D CADで作成した「形状データ」、商品の強度を示す「構造解析データ」、金型製造時に利用する「熱流動解析データ」、商品が設計通りの寸法や形状でできているかを確認するための「3次元計測データ」など、モノづくりに必要なフォーマットの異なる3DデータをFAV仕様に変換し、統合することが可能となる。
さらに、大量のFAV形式の3DデータをビッグデータとしてAI(人工知能)に与えることで、3D CADを用いることなく、手書き図面から瞬時に3D形状を表現するといった新たなコミュニケーションも実現可能になるとする。
今回の仕様拡張に加え、3Dプリンタ活用への期待と活用範囲を広げる可能性などが評価されたことで、FAVは汎用(はんよう)3DデータフォーマットとしてJIS(日本産業規格)に制定された。FAVが多くの製造業で活用されていき、より効率的な生産プロセスの確立や普及を後押しすることが期待される。また、製造業に限らず、FAVの利用が広がることで、一人一人のニーズに柔軟に対応できるきめ細かなモノづくりが促進され、より豊かな生活の実現に貢献できるとする。
今後、富士ゼロックスはモノづくりプロセスにおけるFAVの活用を見据え、顧客ニーズの探索を進め、さらなる価値向上に取り組んでいくという。一方、慶應義塾大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボは、AIや立体地図など、さまざまな応用領域におけるFAVの活用と新たな価値創出を目指すとしている。
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