インフォテインメントは乗員みんなで使う、日産が進めるナビとスマホアプリの連携車載情報機器

日産自動車は、「インテリジェントモビリティ」の要素の1つで、つながる便利さを提供する「インテリジェントインテグレーション」の取り組みの一環で、出発前から到着後まで、車内外の体験をシームレスにつなげるパーソナルサービスの開発を進める。その例が「コネクテッドアプリコンセプト」だ。

» 2019年11月15日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 スマートフォンアプリで目的地を探し、その目的地の住所をカーナビゲーションシステムにアプリから転送し、一緒に出掛ける家族や友人ともスムーズに共有する――。こうしたスマートフォンアプリとカーナビゲーションシステムの連携を提案するのは決して目新しくない。自動車メーカーだけでなくサプライヤーでもこうしたアプリを手掛ける。

コネクテッドアプリコンセプトのデモ機(クリックして拡大)

 その中で日産自動車は、「インテリジェントモビリティ」の要素の1つで、つながる便利さを提供する「インテリジェントインテグレーション」の取り組みの一環で、出発前から到着後まで、車内外の体験をシームレスにつなげるパーソナルサービスの開発を進める。その例が「コネクテッドアプリコンセプト」だ。コンセプトで訴求するメリット自体は従来の提案と似ているが、他社のサービスやアプリが前面に出る点がユニークだ。

 例えば、ドライブの目的地や経由地を調べるときには日産のコネクテッドアプリを使う必要はない。「日産のアプリでわざわざ目的地を探したい人はあまりいないだろう」(日産の担当者)という考えから、日常的に使う地図アプリや、飲食店の口コミ情報アプリで普段通りに行き先を探せるようにした。

 こうしたサードパーティーのサービスでユーザーが目的地や行きたい場所の候補を見つけると、その情報を共有するコマンドとして、メールやメッセージ、メモなどのスマートフォンの他のアプリと並んで日産のコネクテッドアプリが出てくる。日産のコネクテッドアプリを選択して共有すると、日産のクラウドを経由してコネクテッドアプリや日産車の車載インフォテインメントシステムに目的地として保存される。

指の先にあるのが日産のコネクテッドアプリに共有するためのアイコン(左)。Googleマップで見つけた目的地が車載インフォテインメントシステムに共有されている様子(右)(クリックして拡大)

 コネクテッドアプリでは、車載インフォテインメントシステムを、ドライバーだけでなくドライブに行く全員で使うものと位置付けている。そのため、誰が行きたい場所なのか、その目的地がどんなジャンルなのか、その場所に対するちょっとした一言(「絶対行きたい」「おいしそう」など)も目的地と併せて保存し、ドライブに行くメンバーで共有できるようにする。目的地は、ドライブに行く人全員が同じように保存することが可能で、ドライブ当日に車載インフォテインメントシステムの画面から一覧で確認できる。

 ドライブ当日になると、ようやく日産のコネクテッドアプリや車載インフォテインメントシステムが前に出る。クルマのオーナーが、コネクテッドアプリを持つ同行者を車載インフォテインメントシステムに招待すると、招待された全員のスマートフォンと車載インフォテインメントシステムがリアルタイムに連携する。車載インフォテインメントシステムで設定したルート案内や目的地をスマートフォンの画面で見ることができ、必要に応じてアプリから立ち寄り場所を増やすことも可能だ。

ドライブの道中に乗員が見ることができるアプリの画面。SNSでの話題なども見られるようにする計画だ(左)。ルートと共有した目的地をドライバー以外も見ることができる(右)(クリックして拡大)

 また、ドライバー以外の乗員は、日産のコネクテッドアプリから到着地の天候や、到着地付近がSNSでどのように話題になっているかを調べることができる。「目的地までの移動を乗員全員で楽しめるようにしたい」(日産自動車の担当者)。

 このコネクテッドアプリは現時点ではコンセプトであり、製品化時期や料金体系などは未定だ。「アプリを買い切り型で有料にするか、期間に応じて利用料をもらうか、無料にするか、ビジネスモデルはまだ考えていない」(日産の担当者)。

 コネクテッドアプリのコンセプトを製品化する上では、技術面よりもビジネスの進め方がポイントになるという。地図アプリや口コミサービスは複数あり、どの企業と連携するかが課題になる。また、クルマの持ち主ではなくドライブに一緒に行くだけの人に日産のアプリをダウンロードしてもらうきっかけづくりや、車載インフォテインメントシステムの画面の作り込みも今後検討が必要になるとしている。デモ機は「車載インフォテインメントシステムの画面が今までとは異なりかなりスマートフォンに近い。運転の妨げにならないか、安全性を確認しなければならない」(日産の担当者)。

 開発は日産の中目黒オフィスの少人数のメンバーでアジャイル開発を採用して進めている。コンセプトの検証のためユーザーインタビューとその結果を受けた修正を繰り返している段階だ。ユーザーインタビューでは複数人のグループに実際にコネクテッドアプリと車載インフォテインメントシステムを使ってもらっており、好評だという。

 ドライブをどのように計画するか一般の人に尋ねたとき、「インターネットで調べてから、一緒に行く人にメッセージアプリで共有して、クルマに乗った後にやりとりしたメッセージをさかのぼって、カーナビゲーションシステムに住所や電話番号を入力する、という答えがあった。この一連の流れの中にコネクテッドカーは何か価値を提供できるのではないかと考えた」(日産の担当者)というのが開発のスタートだった。

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