トヨタがSDL対応のディスプレイオーディオを標準装備に、ナビアプリはLINE車載情報機器(1/2 ページ)

トヨタ自動車は2019年9月17日、東京都内で会見を開き、「カローラ」のセダンタイプとワゴンタイプを全面改良して、販売を開始したと発表した。セダンタイプは「カローラ」、ワゴンタイプは「カローラツーリング」に車名が変わる。

» 2019年09月18日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 トヨタ自動車は2019年9月17日、東京都内で会見を開き、「カローラ」のセダンタイプとワゴンタイプを全面改良して、販売を開始したと発表した。セダンタイプは「カローラ」、ワゴンタイプは「カローラツーリング」に車名が変わる。

カローラ(左)。カローラツーリング(右)(クリックして拡大)

 先行して投入されたハッチバックタイプの「カローラスポーツ」と同じくTNGA(Toyota New Global Architecture)プラットフォームを採用しているが、カローラとカローラツーリングは取り回しの良さなどを維持するために開発した日本向けの専用ボディーとなる。価格はカローラが消費税10%込みで193万6000円から、カローラツーリングが201万3000円からとなる。

 また、カローラとカローラツーリング、同時に一部改良を実施したカローラスポーツは、トヨタ自動車としては日本で初めてディスプレイオーディオを標準装備とする。従来型のカーナビゲーションシステムが欲しいユーザーには、エントリーナビキット6万6000円、コネクテッドサービス対応の「T-Connect」ナビキット11万円を用意している(価格はいずれも税込み)。GPSや3Dジャイロセンサーはディスプレイオーディオには含まれておらず、2種類のナビキットのみでの設定となる。

CarPlayとAndroid Autoは有料オプション

標準装備のディスプレイオーディオ(クリックして拡大)

 カローラシリーズに搭載するディスプレイオーディオは「Smart Device Link(SDL:スマートデバイスリンク)」を採用しており、LINEのカーナビゲーションアプリ「LINEカーナビ」などが使用できる。

 SDLは、自動車メーカーやサプライヤーなどがコンソーシアムに参加し、スマートフォンのアプリとカーナビの連携をオープンソースで進めている規格だ。SDL対応車載情報機器の標準装備化と、カーナビゲーションアプリとの連携が可能なSDL対応車載情報機器を投入するのは、トヨタ自動車ではカローラとカローラツーリングが初めてとなる。

 日本ではSDL対応の車載情報機器はディーラーオプションなどで販売されているが、車載情報機器と連携できるアプリは音楽やAIアシスタントなどに限られていた。今回、LINEカーナビとSDL対応機器の連携が2019年9月17日に開始したことにより、SDL対応機器がカーナビゲーションシステムとして日本で本格的に使われるようになる。LINEカーナビは利用料や地図の更新が無料で、目的地の設定やLINEでのメッセージの送受信などが音声入力で操作できる。また、企業が開発するSDL対応アプリは今後増える。

CarPlayの利用イメージ(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 ディスプレイオーディオではAppleの「CarPlay」やGoogleの「Android Auto」も使用できるが、フルセグTV視聴機能を含めた3万3000円のオプションサービスを購入して機能を有効化しなければならない。トヨタ自動車のディスプレイオーディオの担当者によれば、「カーナビにTV視聴を求めるユーザーは全体の5割」としており、フルセグTV視聴機能を目当てにオプションサービスを購入するユーザーも少なくないとみられる。

 また、CarPlayやAndroid Autoを含むオプションサービスを利用するには、コネクテッドサービス「T-Connect」の利用契約を結ぶ必要があり、これに伴ってT-Connectユーザーも拡大しそうだ。なお、T-Connect向けの車載通信機(DCM)も全車標準搭載となるが、DCMはT-Connectの機能の通信のみカバーする。SDLやCarPlay、Android Autoのアプリ使用時に発生する通信料はスマートフォンの持ち主が負担することになる。

 ディスプレイオーディオの担当者は「トヨタとしてCarPlayやAndroid Autoを使えなくする理由はないので、機能を用意した。価格設定としてはSDLを推した格好だが、スマートフォンを持っている人であれば、カーナビを買わなくてもナビゲーション機能がすぐに使えるという形にしたかった。スマートフォンをカーナビ代わりにして割り切れる人も増えているが、自動車メーカーとしては安全に使ってもらいたいという思いがある。おカネをかけない装備でも、音声操作など安心安全に使えるようにしたかった」と述べた。

 ナビキットを購入しないディスプレイオーディオのユーザーでも、T-Connectの幾つかの機能は利用できる。その例として、緊急通報システム(ヘルプネット)やスマートフォンからクルマの状態が分かる「マイカーサーチ」、警告灯が点灯した際にコールセンターと連絡を取れる「eケア」がある。ディスプレイオーディオのみのユーザーとナビキットの購入者の比率は「カローラユーザーの年齢層やスマートフォンにどの程度親しんでいるかという事を考えると、半々になるのではないか」(ディスプレイオーディオの説明員)。

 カローラシリーズのチーフエンジニアであるトヨタ自動車 MS製品企画の上田泰史氏は、ディスプレイオーディオを標準装備化した理由が幾つかあると語った。「1つは車両のビッグデータを上手に使いたいという理由だ。1台1台の個別の対応というよりも、日本を走るクルマに関するデータをうまく使いたいので、データの量が重要になる。データ量が増えることでお客さまに利便性を提供しながら、社会としてもうまく使えるようにしていきたい。もう1つはスマートフォンの存在だ。地図や音楽などさまざまなスマートフォンアプリを車内外でシームレスに使えるサービスを提供したいという思いがあった。この形はカローラシリーズを皮切りに今後のマルチメディアサービスの体系になっていくだろう。また、ディスプレイオーディオを標準装備とすることで、お客さまのコスト負担を抑えられる点も重視した」(上田氏)。

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