さらに、材料に関しても課題があるという。それは、選択できる材料メーカーが限られており、海外に比べて材料コストが高いことだ。この課題に対し、近藤氏は材料選択における自由度が非常に重要だと指摘する。またこれに関連し、オープンプロセス(プロセスの自由度)も不可欠だという。「オープンプロセスとは、ユーザー自身が自由にプロセス条件を設定してモノづくり、新素材の開発ができるということだ。もちろん、ユーザー自身が新しいプロセス条件を一から作り出すことは難しいため、ここはメーカー側がサポートしてあげる必要がある」(近藤氏)。
そこでDMG森精機では、材料粉末の合金の構成元素を選択し、粒度分布を入力するだけで最適パラメータを自動計算してくれるパラメータ最適化ソフト「OPTOMET」を提供する。「最適なプロセス条件を導き出す際、広大な砂漠の中からそれを探すのか、あるいは小さな砂場から探すのかでは大きな違いがある。OPTOMETを用いることで、限られた範囲内から最適解を得ることが可能となり、それをベースにベストなプロセス条件を追い込むことができる」と近藤氏は説明する。
その他、講演では同社AM装置による具体的な活用イメージについても紹介。銅合金とステンレスによるバイメタルバルブや金型の修理、ワーク内の冷却管形成、硬質コーティングなど、各種装置による加工事例の数々を披露した。
このように、複数のAM装置のバリエーションと組み合わせにより、さまざまな用途に対応してきたDMG森精機。しかし、AM技術の普及はまだ途上であり、近藤氏は「確実にいえることは、既存技術の代替えとしてAM技術を活用しようとすると絶対に採算は合わない。AMを新技術として捉え、AMでなければできない形状、AMでなければできないシチュエーションを見いだすことが重要だ」と訴える。
また、設計プロセスに関しても、AM技術に適したデザインの自由度(余裕度)が求められるとし、「やはり、デザインの領域そのものが変わらないとAM技術が入っていかない。そこで、われわれ自身もメカ設計者のマインドセットを2次元思想から3次元思想へとシフトするトライを進めようとしている。これができれば自分たちの装置の中にもAM技術を使った部品やコンセプトが浸透していき、そこから価値も得られるはずだ」と、近藤氏はDMG森精機が自ら変わっていくことで、AM技術普及の足掛かりとしたい考えを示した。
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