「データ活用」以前に「データ化」をどう考えるかが大きな障壁として立ちはだかります。
この記事は、2019年8月16日発行の「FA メールマガジン」に掲載されたMONOistの編集担当者による編集後記の転載です。
2019年7月に福岡県に伺い、九州の各自治体が運営する製造業向けIoT推進団体の方々と交流する機会を得ました。その中で、第4次産業革命やスマート工場化などの話題についてお話したのですが、各団体の担当者が語っていたのが「地方の中小企業が、IoT活用を進めるのは相当難しい。特にデジタル変革など大規模なITシステムとの組み合わせとなるとさじを投げる企業がほとんどだ」ということです。
例えば、インダストリー4.0などで理想の姿として描かれているのが「マスカスタマイゼーション(大量生産の効率で個別のカスタム製品を作る仕組み)」で、これを実現するためには自律的に変化する工場が必要となります。自律的に可変させるためには、そのバックヤードとなる設計や製造、調達、物流などのシステムが一元化され連携して情報のやりとりを行えるようになっている必要があります。合わせてこれらのバーチャル上の変化をリアルの世界に落とし込めるような自動化・自律化設備が必要になります。具体的な設備としては、自律的に動作するロボットや設備、無人搬送車などが当てはまります。
大規模なITシステムの導入や多くの自動化設備の導入などは、中小製造業にとっては、そもそもの予算規模が何桁も違っており、予算額を聞いた時点で引いてしまう場合がほとんどです。さらに、こうしたスマート工場化やIoTの活用は、導入前から成果が確約されたものではありません。データなどを集めて、見える化や分析などを通じて初めて成果が生まれるというものです。つまり「投資対効果が見えないものに通常の予算感の何倍、何十倍もの投資をしなければならないのがIoT」という認識になってしまっているのです。こういう状況では中小製造業がそっぽを向くのも分かるような気がします。
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