「MONOist IoT Forum in 福岡」では、ここまで紹介してきた基調講演、特別講演、ランチセッションに加え、4本のセッション講演も実施した。その様子をダイジェストで紹介する。
ウイングアーク1stは「IoTと可視化で掘り起こす! モノづくり現場に埋もれる80%の情報」をテーマとし、モノづくり現場で活用できていない情報をIoTにより可視化することで得られる改善効果などを紹介した。
ウイングアーク1st 営業・カスタマーサクセス本部 インダストリー企画営業統括部 製造企画営業部 Light IoT推進グループ 込山将大氏は「製造現場において活用されているデータは、整理された情報である20%であり、整理されていない80%の情報は活用されてこなかった」と語る。これらが活用できなかった理由としては「データが利用可能でなかった場合や、データの活用方法がなかったという課題があった。IoTや分析技術の進展によりこれらが解決されてきた」(込山氏)とする。
これらを活用する手段として同社のノンプログラミングで活用できるソリューションなどを紹介。込山氏は「製造現場の整理されていない情報を活用するのは、以前は難しかったが、今はノンプログラミングでも利用できる仕組みなども生まれ、IoT導入のハードルは下がってきている。IoT活用を諦めていた企業でも導入できる環境が生まれてきている」と訴えた。
テナブルネットワークセキュリティジャパンは「脆弱性管理の進化が止まらない〜業界初、悪用される脆弱性の予測機能〜」をテーマとし、企業全体で脆弱性を全て完璧になくすことが不可能であることを強調。悪用がされそうな脆弱性から優先的に対応を進める「脆弱性管理」の重要性を訴えた。
スマート工場や製品のIoT化などの流れの中、あらゆる機器がネットワーク化されていく中で欠かせないのがセキュリティの問題である。サイバー攻撃にはゼロデイ攻撃なども存在するが、多くの攻撃は既知のソフトウェアの脆弱性を狙って行われる。しかし、公開されている脆弱性だけを考えても数多く、毎年新しいものが日々公開されている状況だ。
テナブルネットワークセキュリティジャパン Security Engineer 阿部淳平氏は「2018年に公開された脆弱性は1万6500個にも及ぶ。数万単位で使用される可能性があるIoTデバイスまで考えると企業単位で見ると数十万、数百万の脆弱性が存在することになる。これを全て対策するのは不可能に近い。そこで日常的に脆弱性を管理し、悪用される脆弱性に絞って優先的に対応するという考え方が重要になる」と語り、同社の脆弱性確認ツールの有用性を訴えた。
日本マイクロソフトは「マイクロソフトが推進するインテリジェント・エッジ&クラウド」をテーマとし、エッジとクラウドをシームレスにつなぎ、一元的にデータ活用を進める価値を訴えた。
IoTやAIなどのデータ活用では、大容量のデータを収納するストレージが必要であることに加えて、AIなどで必要になる演算能力を確保する意味でもクラウドの活用が必須となっている。一方で、クラウドでは、セキュリティ面やリアルタイム性への対応などで課題があり、特に工場などではエッジ側のみで処理するエッジコンピューティングなどが求められている。日本マイクロソフトでは、Windowsなどでエッジ側のソフトウェアを抱える他、Azureなどのクラウドを展開することから、これらをシームレスに活用する「インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジ」というコンセプトを訴求する。
日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 製造営業統括本部 製造業ソリューション 担当部長の鈴木靖隆氏は「従来はデータを取りにくかったり、取れていたけど使えていなかったりしていたところで、利用できるようになった。データをインテリジェンスとして、実際の業務プロセスに組み込み、価値を生むことができるようになった。クラウドとエッジのハイブリッドな環境で、製造業のデジタル変革を支援していく」と語っている。
東京エレクトロンデバイスは「IoT/AI活用は実証から実装へ、予知保全を実現する現場力とAI力の勘所」をテーマとし、「予知保全」に特化し、現実的な実現方法とソリューションについて紹介した。
東京エレクトロンデバイス PB営業本部 デジタルファクトリー営業部 部長の神本光敬氏は「IoTといえば非常に幅広いが、価値を生む領域として注目されている大きなテーマがAIなどを活用した『予兆保全』である。具体的にテーマとして多いのは『設備の故障検知』と『部品の交換タイミングの最適化』『良品および不良品判定の最適化と要因分析』の3つの方向性での活用が求められている」と語る。
これらの「予兆保全」に関するAI活用では、学習、PoC(概念実証)、本実証、実装の4つのステップを経て導入が進むが、神本氏は「データを活用するところに壁があると感じている。集めたデータを活用できないケースもある他、データを活用する技術者の問題、初期投資の問題などもある」と課題について述べる。
これらを解決するには「Excelのように現場で自由にどんどん活用が進むようなAIツールが必要だ」(神本氏)とする。東京エレクトロンデバイスでは、IVIなどにも参加しこれらの「Excelのように使えるAIツール」の開発を推進していることを訴えた。
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