次に、幾何公差の公差記入枠へのデータム記号の指示について説明します。図9のように、意図するデータム領域を設定し、公差記入枠にデータム文字記号を挿入します。
この例では、データムAが示す母線の面を基準として、平行度0.2の面とすることを指示しています。ここまでの例では、1つのデータム形体によってデータムが設定されていましたが、2つのデータム形体によってデータムを設定することも可能です。その一例として、先ほど登場した軸形状部品を題材に解説します(図10)。
異なる軸径を持つ単一部品において、両端の軸の中心線に対して、中央部の同軸度を指示する場合を考えます。このような形状は、駆動軸として使用され、両端がベアリング支持されるような「ボールねじ」や「台形ネジ」などで見受けられます。
言い換えれば、中央部の軸は「同軸である2つの最小外接円筒を固定してできる共通軸直線を持つ」ということです。
SOLIDWORKSでは、2次元図面化の際に、図12のような設定を行うことで、共通データム A-B(A ハイフン B)という設定ができます。
続いて、2つ以上のデータムによって設定される「データム系」について、「JIS B 0022−1984 幾何公差のためのデータム」を参考に解説します。
図13のように、2つ以上のデータムを組み合わせて設定するデータム系の場合は、A⇒B⇒Cとあるように公差記入枠のデータム記号記入欄の左側から、第1データム⇒第2データム⇒第3データムというように、優先順位の高い順にデータムを設定します。この記入欄には優先順位があるということを意識してください。
この例では、第1データムが矩形形状の底面、第2データムが左側面、第3データムを正面とし、矩形部品の上面より開けられた穴の「位置度」を示しており、その穴の中心線がΦ0.5以内にあることを指示しています(※注)。この位置度を設定するに当たり、矩形形状の部品を固定する順番がA⇒B⇒Cの順となっているわけです。なお、データム形体は“均一な面ではない”ことを前回解説しました(図14)。
※注:(M)(マルエム:○の中にM)と記載されている最大実体公差(Maximum material requirement)については、別途解説します。
例えば、定盤上に矩形部品を置いた場合、その定盤の平面方向(厚み方向)の位置は決まりますが、側面方向(左右方向)と正面方向(前後方向)のどちらを先に固定するかによって微妙に部品の回転が発生し、固定位置が変化します。データムの優先順位は、固定の順番/基準の順位を示すものであって、決して単純にアルファベット順にデータム記号を左から記入しているわけではありません。案外、アルファベット順に描いてしまっている人も多いのではないでしょうか。
今回もJIS規格を参考に、データム記号の使用方法について解説しました。筆者も学生時代に「JIS製図」を学んできましたが、学校であろうと企業であろうと、単に3D CADの操作習得を目的とするのではなく、基本的な加工技術や製図技術を身に付けて、それらを3D CADを使う上でのバックグラウンドとして役立てることが何よりも重要だと確信しています。 (次回に続く)
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