機械メーカーで機械設計者として長年従事し、現在は3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者が公差計算や公差解析、幾何公差について解説する連載。第6回は“具体的な幾何公差”について取り上げる。
前回までは“設計の基準”となる「データム」について、その使い方を含めた内容を説明しました。
今回は、とある教職員の方から聞いたこんな一言から始めたいと思います。
学生が2次元(2D)図面を十分に理解できていないようだ。何とかしなければ……
検査するときも図面の内容を読み取る必要がある
教育機関も製図や2D CADの教育をしています。筆者も教育機関で非常勤講師を務めていますが、CADのオペレーションを教えるのではなく、3D CADを使用した設計の基礎教育を教育方針として掲げています。
3D CADの設計教育を行う中で、実は2D図面設計についても指導していますが、その時間は必ずしも十分ではないため、非常に悩ましいところです(その対策を今考えている最中です)。また、世の中にはCAD/CAM連携をうたう教育もありますが、その多くがオペレーション教育中心になっていることもあり、こうしたことが“図面を十分に理解できない”という弊害を生じさせているのかもしれません。
筆者としては、
2Dの図面も3Dの図面も“その設計意図を伝えるもの”として違いはない
と考えます。
さて、ここまで幾何公差の目的、その基準となるデータムについて解説してきましたが、今回からは“具体的な幾何公差”について取り上げます。
幾何公差については、JIS検索にあるキーワード検索やJIS要覧から調べることができます。これまでも「JIS B0021-1998」について紹介してきましたが、今回も「製品の幾何特性仕様(GPS)−幾何公差表示方式−形状、姿勢、位置および振れの公差表示方式」を参照して解説を進めます。
設計者や設計経験者、あるいは加工および検査に携わる方であれば、日常的に使用するおなじみの幾何公差(「特性」「記号」)もあれば、あまりなじみのないものもあるかもしれません。ここで分類されている4種類の幾何公差は、次のようなものになります。
このように、データムを必要とするか/しないか、という見方をする場合、データムを必要としない単独形体として扱うものには、「形状公差(Form Tolerances)」があり、データムを必要とする関連形体として扱うものには、「姿勢公差(Attitude Tolerance)」「位置公差(Location Tolerance)」「振れ公差(Runout Tolerance)」があります。
「形体」という用語については、これまでも(最近のJIS規格だと「寸法公差」ではなく「サイズ公差」なのはなぜか?)説明していますが、3D CADでよく使用される「フィーチャー(Feature)」や「ジオメトリ(Geometry)」と同じように、その形状をイメージすれば分かりやすいでしょう。では、その詳細について説明を進めます。
「真直度公差」とは、その文字が示すように“真っすぐさ”を示します。理論的に正しい“真っすぐな直線”から離れてもよい許容値を規定するものです。この真直度公差は「平面」「円筒表面」「円筒軸線」の3種類に適用されます。
対象とする平面内で、公差域は「t」だけ離れ、指定した方向に「平行2直線」によって規制されます。
指示された方向における投影面に平行な任意の実際の線は、「0.1」だけ離れた平行2直線の間になければならないことを図面で指示しています。
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