また、海老原氏はIsightを用いたブローCAEの自動化についても解説。「ブローCAEを実施する理由として成形性の確認もあるが、それだけではなく板厚による性能変化も捉える必要がある」(海老原氏)とし、ブローCAEによる板厚分布を膨潤変位CAEの結果にマッピングした取り組みを紹介。八千代工業ではテラバイトのブロー成形シミュレーション「BlowView」を使用しており、当初はBlowViewをIsightに組み込んだ複合領域最適化技術の構築を目指したが、CATIAとの連携がうまくできず、形状変更まで実現しなかったという。
そこで、あらためてBlowViewを組み込んだ自動化および最適化フローの構築を目指した。「今度は、CATIAの形状からAbaqusで金型メッシュを作成し、これをBlowViewで計算(BlowViewのメッシャーとしてAbaqusを活用)。取得した板厚分布を膨潤/バーストモデルに自動マッピングして、この状態で膨潤変位CAEとバーストCAEの2つの計算を実行するというフローを構築できた」と海老原氏は述べる。これにより、従来、別々に検討していたバーストCAE、膨潤変位CAE、ブローCAEを同時に一括で実行可能になり、複雑なトレードオフ問題を効率的に解決できるようになったという。
さらに、同社では単に技術構築の結果をツールとして実現するのではなく、ベテランでも若手でも同等品質で設計が行えるよう、ベテラン設計者の暗黙知的技能の形式知化にも取り組む。具体的には、プログレス・テクノロジーズの設計改革パッケージサービス「PTDBS(Progress Technologies Design Basis System)」を活用し、設計者の思考プロセスをロジックおよび数式化し、Isightに組み込んで自動設計プロセスを作成した。
このように同社はCAEを活用した技術構築、ツール化の取り組みを段階的に進めつつ、並行してその中身を熟成させてきた。そして、2019年度のチャレンジとして、いよいよ設計現場への展開を本格化する。
「われわれはこれを“CAEの民主化(デモクラタイゼーション)”と呼んでいる。製品開発におけるV字モデルを基本とし、その中でダッソー・システムズの『3DEXPERIENCEプラットフォーム』を導入して、シミュレーション主導の設計を全社展開していきたい。また、これまで燃料タンクを中心に取り組んできたが、今後、サンルーフなどその他の取り扱い製品に対しても同様の枠組みを適用していく考えだ」と海老原氏は今後の展望を語り、講演をまとめた。
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