自宅のTVで実施する運転技能向上トレーニング・アプリを開発医療機器ニュース

東北大学は、自宅のTVで実施できる運転技能向上トレーニング・アプリを開発した。高齢者を対象に効果を検証したところ、自動車運転技能、認知力(処理速度)と抑制能力、ポジティブ気分(活力)が向上した。

» 2019年06月06日 15時00分 公開
[MONOist]

 東北大学は2019年5月20日、自宅のTVで実施できる、運転技能向上トレーニング・アプリを開発したと発表した。高齢者を対象に効果を検証したところ、自動車運転技能、認知力(処理速度)と抑制能力、ポジティブ気分(活力)が向上した。同大学加齢医学研究所 教授の川島隆太氏らの研究グループが明らかにした。

 トレーニング・アプリは、川島氏による脳科学研究の成果と、仙台放送が開発・放送している脳トレーニング番組『川島隆太教授のテレビいきいき脳体操』の知見を基に開発。これを活用し、仙台市、塩竃市、栗原市で募集した健康な高齢者60人を対象に、運転技能向上トレーニング・アプリを使う「運転技能向上アプリ群」と、その他のゲームをする「対照アプリ群」に分けて無作為比較対照試験を実施した。

 運転技能向上トレーニング・アプリのゲームは、できるだけ早く回答することが要求され、参加者の成績によってゲームの難易度が変化する。これに対し対照アプリ群のゲームは、早く回答する必要はなく、参加者が早く回答しても、一定時間が経過するまで先に進まない設定となっている。また、難易度の変化もない。

 両群ともに6週間、自宅のTVに接続したセットトップボックスを用いてゲーム介入を行った。トレーニング介入前後に、自動車教習所のコース上での自動車運転技能検査や認知機能検査、感情状態などを聞く心理アンケートを実施し、ゲーム介入による変化を計測した。

 その結果、対照アプリ群よりも、運転技能向上アプリ群の方が自動車運転技能、認知力(処理速度)と抑制能力(検査名:ストループ)、活力気分が向上することが分かった。

 これらの成果から、同アプリにより、6週間という短期間でも高齢者の運転技能や認知機能、活力気分が向上することが明らかになった。自宅のTVでできるため、高齢者でも取り組みやすく、高齢者の運転技能の維持・向上ためのツールとして、さらには高齢者の交通事故減少を目指した取り組みなどでの活用が期待される。

photo 運転技能向上トレーニング・アプリの実施状況と運転技能向上トレーニング・アプリのゲームの例(クリックで拡大) 出典:東北大学
photo 対照アプリ群のゲームの例(クリックで拡大) 出典:東北大学
photo 運転技能向上アプリ群と対照アプリ群の介入による変化量。変化量は、得点が高いほど良いことを示す。 出典:東北大学

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