建機大手のコマツでは、スマートコンストラクションなど建機のスマート化に取り組む一方で、自社製品を製造する工場のスマート化にも取り組んでいる。工場内の機器からの情報収集により改善を進めていく他、工場間の情報を一元的に管理するためにクラウドでの情報基盤を用意。この基盤として、マイクロソフトのクラウド基盤「Microsoft Azure」を採用しているという。
コマツ 生産技術開発センタ所長の山中紳好氏は「生産現場改善の取り組みとして工場内の機器のデータを収集し見える化や分析が行える体制を整えてきた。2014年以前は部品加工を熟練技術者の経験を基にするなど、属人化された状況だった。それを加工機の作業内容を見える化し、その後これらのデータを分析して加工条件を最適化。AIによる異常検出が行える体制を作った。現在は非加工時間の原因を洗い出して自働化領域を拡大する取り組みを進めている。こうした取り組みの中で情報を一元的には把握できる情報基盤が必要だと考え『KOM-MICS』を整備した」と取り組みについて述べている。
複数の工場を連携させることを考えるとクラウドの活用というのが必須となる。山中氏は「最初はオンプレミスで1つの工場内で取り組んだが、これがうまくいったのでさまざまな工場や協力工場も含めて展開したいと考えた。データの解析が生産性改善に効果的であることはわかったが、個別の工場でこれらのデータ分析を行うのは時間がかかるので、全体を常時つなぐということを実現したいと考えたからだ。そこで2016年にオンプレミスからクラウドへと切り替えることを考えて、マイクロソフトと協力して取り組みを進めた」と述べている。
現在では、工作機械700台、溶接ロボット380台が接続済みで、常時データが取れる状況になっているという。「接続機械の台数が増える中で、データストレージの拡張という意味でもクラウドの活用は欠かせなかった」(山中氏)としている。
東芝ではCPS(サイバーフィジカルシステム)テクノロジー企業を目指すとし、以前から取り組むインフラ事業などのビジネスと、デジタルソリューションを組み合わせることで新たな価値創出を実現する取り組みを進めている※)。これらの実現に向けて、独自のレファレンスアーキテクチャを整備し、2019年中にはこのアーキテクチャ上に10以上のソリューションを整備する予定だとしている。
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東芝でITソリューション事業を展開する東芝デジタルソリューションでは、これらの取り組みの中で、社内の製品群とデジタル技術を組み合わせた取り組みを進めるとともに外部へのさまざまなITソリューションの提供を進めている。従来はオンプレミスでの展開を中心としてきたが、マイクロソフトのクラウド基盤「Microsoft Azure」との連携を強化する。
東芝デジタルソリューションズ ICTソリューション事業部 事業部長の岡田俊輔氏は「既に物流向けソリューションではAzure対応を進めているが、2019年秋には製造業向けソリューションの『Meister』シリーズもクラウド版をリリースする予定だ。従来は工場ではクラウドへの抵抗があったが、2018年後半くらいからクラウドが必要だとする声が高まってきた。これらの動きに対応する」と語る。
東芝デジタルソリューションズではAzureだけと連携をするわけではないが、Azureの魅力について「豊富なAI、IoT関連機能」「世界最大のリージョン展開」「充実した支援プログラムと開発者ネットワーク」「コンプライアンスプログラム」「既存Windows系システムの移行に有利」「パートナーエコシステム」の6つがあるとする。
岡田氏は「これらの利点の中でも特にパートナーエコシステムが充実している点は大きな魅力だと考えている。マイクロソフトとの連携だけでなく、パートナー同士の連携により新たなソリューション創出などに取り組んでいける」と述べている。
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