特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

コニカミノルタ、コマツ、東芝が取り組むそれぞれのデジタル変革製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

日本マイクロソフトは、製造業向けのデジタルトランスフォーメーションの取り組み事例を発表。新たにコニカミノルタとグローバルでの包括的提携を発表した他、工場向けでは小松製作所、エコシステムでは東芝との取り組みを紹介した。

» 2019年05月22日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 日本マイクロソフトは2019年5月16日、製造業向けのデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)の取り組み事例を発表。新たにコニカミノルタとグローバルでの包括的提携を発表した他、工場向けでは小松製作所(コマツ)、エコシステムでは東芝との取り組みを紹介した。

製造業向けの3つの取り組み

 日本マイクロソフトでは、製造業向けでのデジタル変革の提案として、工場などの生産改善を進める「Factory of the future」、コトをベースとしたサービスビジネス提供を進める「Product as a Service」、サプライチェーン全体をデジタル技術で最適化する「Intelligent Supply Chain」の3つの方向性で取り組みを進めている。

photo 日本マイクロソフトが取り組む製造業向けデジタル変革の3つの方向性(クリックで拡大)出典:日本マイクロソフト

 日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 製造営業統括本部 インダストリーマーケティングマネージャーの鈴木靖隆氏は「1年前までは多くの製造業が、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などを活用したデジタル変革への取り組みに対し、関心は高いもののなかなか現実的に進められないケースが多かった。しかし、ドイツのハノーバーメッセなどでの状況を見ても、ここ1年は実際のビジネスにつながるような具体的なユースケースが増えてきている」と状況の変化について語る。

 これらの具体的な取り組みの例として、新たにパートナーシップを結んだコニカミノルタ、スマートファクトリー化に取り組むコマツ、新たなエコシステム構築に取り組む東芝の事例を紹介した。

新たにマイクロソフトとの包括的パートナーシップを結んだコニカミノルタ

 コニカミノルタは「モノ」から「コト」へのビジネスモデル変革へと取り組みを進めている。その象徴的な取り組みの1つが「Workplace Hub」である。

photo コニカミノルタ 常務執行役 産業光学システム事業本部長 兼 ビジネスイノベーションセンター 兼 渉外担当の市村雄二氏

 「Workplace Hub」は複合機をグローバルで展開するコニカミノルタの従来の強みを生かし、複合機ハードウェアにサーバ機能やIoTゲートウェイ機能を持たせてIoTプラットフォームとして活用する発想で生まれたものだ。「Workplace Hub プラットフォーム」として、複合機のハードウェアやOSなどのオンプレミス基盤と、遠隔監視や遠隔保守、ストア機能、従量課金基盤などのクラウド基盤を組み合わせたハイブリッドプラットフォームとして提供する。さまざまな機器をこの「Workplace Hub」経由でネットワーク接続することでエッジ領域でのデータの収集と活用を実現する※)

※)関連記事:サーバ付き複合機はその一端、コニカミノルタが挑む「持続的パートナー」への道

 コニカミノルタ 常務執行役 産業光学システム事業本部長 兼 ビジネスイノベーションセンター 兼 渉外担当の市村雄二氏は「データは次世代の石油になるといわれている。データを活用することを考えた場合、デジタル化されすぐに活用できるデータというのはほんの一部で、非構造化データや人依存のデータなど、従来はすぐに活用できないデータが数多く存在する。これらを、光学技術などを生かして取り込み活用できるようにする。そういうエンジンにコニカミノルタがなる」と述べている。

 具体的には、オフィス向けソリューション、介護向けソリューション、製造業向けソリューション、セキュリティソリューションなどを展開。コニカミノルタが持つ光学技術などを生かしたセンシングにより取得したデータを「Workplace Hub」などで収集し、これらのデータを活用することで、それぞれの現場業務の改善を進めている。

photo コニカミノルタのデジタル変革(クリックで拡大)出典:コニカミノルタ

 この方向性での取り組みを強化する中で、新たにコニカミノルタがパートナーに選んだのがマイクロソフトである。両社はグローバルでの包括的契約を結び、デジタル変革においてそれぞれで価値共創を実現する。

 協業のポイントは3つである。1つ目がテクノロジー面での協力、2つ目が人材育成での協力、そして3つ目が外部販売での協力である。

 協業の最も大きな動機となったのがテクノロジー面での協力である。エッジ側の情報活用基盤としての役割はコニカミノルタ側が担うが、クラウドでのデータ収集基盤やデータ活用アプリケーションなどをコニカミノルタは保有していない。これらをマイクロソフトに補完してもらうことでトータルソリューションを実現することを目指す。

 市村氏は「Workplace Hubの提案などを進める中で、提案先が既にアプリケーションとしてマイクロソフトのさまざまなサービスを活用しているケースに多く出会った。既に蓄積しているこれらの業務データと、新たに集めるエッジ側の情報を組み合わせることで現場に新たな価値を創出できる。こうした保有データに対する連携という面が協業の動機として大きかった」と語る。

photo コニカミノルタとマイクロソフトの協業によるそれぞれのテクノロジーマップ(クリックで拡大)出典:コニカミノルタ

 さらに、IoTやAIなどのデジタル人材不足に対し、共同で人材育成の取り組みを進める他、グローバルでの相互販売などを進めていくとしている。「マイクロソフトが持つパートナーエコシステムなども大きな魅力だ。マイクロソフトとの連携だけでなく、マイクロソフトのユーザー同士の連携なども含めて協力してデジタル変革への提案を進めていく」と市村氏は話している。

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