日本能率協会が「2019年度 新入社員意識調査」の結果を発表した。新入社員と上司側との意識の差や、過去調査と比較することで分かった、仕事や働き方に対する新入社員の考え方の変遷などがまとめられている。
日本能率協会は2019年4月16日、「2019年度 新入社員意識調査」の結果を発表した。
同調査は、日本能率協会の新入社員向け公開教育セミナー参加者を対象としたもので、384人から回答が得られた。
まず、5月から「令和」という新時代を迎えることについて、世の中が良くなる期待を持てるか尋ねた。その結果、「どちらとも言えない」(39.6%)が最も多かった。「期待できる」は30.7%で、「期待できない」は12.2%だった。
次に、今の気持ちを漢字一文字で表してもらった。挙がった漢字128のうち、最も多かったのは、昨年と同じ「新」(32票)。2位の「挑」(24票)と、3位の「努」(13票)も昨年と同じ順位だった。今回の3位はもう1つあり、前年6位だった「進」がランクインしている。
上位に前向きな気持ちを表す漢字が続く一方で、昨年は1票だけだった「不」が10票を獲得し、5位に入った。昨今のように変化が激しい状況にあって、「不」の字に不安な気持ちが表れているようだ。
仕事をしていく上での不安については、全体では「仕事での失敗やミス」と「上司、同僚など職場の人とうまくやっていけるか」が43%で同率トップとなった。「上司、同僚など職場の人とうまくやっていけるか」と回答した人を男女別に見ると、男性37.7%に対し、女性は54.0%と男性より多くなっている。ほかに男女で回答に差が見られた項目は「仕事に対する現在の自分の能力、スキル」で、男性24.6%に対し、女性は41.1%と男性の約2倍になった。
さらに、これから仕事をしていく上で「強化したいと思う点」を尋ねたところ、「コミュニケーション力」(42.7%)が最も多かった。続いて、「業務上必要な専門知識、技術」(34.9%)、「ビジネスマナー」(22.1%)。4位の「チャレンジ精神」(19.5%)は、昨年の12位から順位を大幅に上げている。
自らの「働く目的」を尋ねた質問では、「自分の能力を高めること」(49.7%)が最多。昨年の33.5%から、15ポイント以上増えている。
また、「働く目的」の3位となった「社会の役に立つこと」(37.5%)に注目すると、28.7%だった昨年から約10ポイント上がっている。さらに「(自分の)働いている会社が社会の役に立っているかをどの程度重要視しているか」を尋ねたところ、「とても重要だと思う」が59.9%、「やや重要だと思う」は33.9%となり、合わせて93.8%となった。
「転職を考えるシチュエーション」についても尋ねた。その結果、「強く思う(強く転職のことを考える)」「そう思う(転職を考える)」の合計が76.8%と最も多かったシチュエーションは、「パワハラやセクハラにあったとき」だった。これを男女別に見ると、「強く思う」「そう思う」の合計が、男性は72.7%、女性は85.5%にのぼった。
今回の調査では、新入社員と上司の間のギャップを確認するため、人事や総務、管理系担当者、上司など60人にもアンケートを実施した。「入社後3年以内に、新入社員に強化してほしい点」を尋ねたところ、1位は「コミュニケーション力」、2位は「業務上必要な専門知識、技術」で、新入社員が自ら強化したいと考えている点と一致していた。3位は異なり、新入社員は「ビジネスマナー」だったが、上司は「主体性」だった。
次に、新入社員には「理想の上司、先輩像」、上司には「新入社員が理想だと思う上司、先輩像」を尋ねた。その結果、それぞれの1位は、新入社員が「仕事について丁寧な指導をする上司、先輩」で、上司側は「部下の意見、要望を傾聴する上司、先輩」だった。
新入社員が「働く上での不安」として挙げた、「仕事での失敗やミス」(1位)や「自分のスキルや能力」(3位)は、上司ではそれぞれ7位、8位だった。新入社員が不安に思うほどには、上司側は新人の失敗を気にしておらず、スキルや能力も後から身に付けばよいと考えていることがうかがえる。
プライベートと仕事については、「プライベートを優先したい」と30.7%が回答。「どちらかというとプライベート」も47.4%となっており、合わせるとプライベートを優先したい新入社員が約8割を占めた。
次に、「仕事と生活(プライベート)のバランスをどのようにとりたいか」を尋ねた。1989年の調査では「仕事を優先する」が5.6%、「やや仕事を優先する」が23.0%で、仕事優先派は3割弱だった。生活優先派も「生活を優先する」6.5%、「やや生活を優先する」21.4%を合わせて3割弱と、両者は同程度だった。
1999年になると、「仕事を優先する」が7.9%、「やや仕事を優先する」が29.2%となり、仕事優先派は約4割に。一方、生活優先派は「生活を優先する」3.9%、「やや生活を優先する」が12.9%で2割弱になった。
2009年では「仕事を優先する」5.5%、「やや仕事を優先する」25.0%で仕事優先派が約3割になった。生活優先派は「生活を優先する」3.4%、「やや生活を優先する」16.7%で2割となり、10年前の差が狭まっている。
定年退職や転職、独立については、2019年調査では「定年まで一つの会社に勤めたい」が29.4%、「どちらかというと定年まで一つの会社に勤めたい」が33.3%で、合計62.7%となった。「機会があれば転職、独立したい」という転職、独立派は「どちらかというと転職、独立したい」を合わせて37.2%で、定年派が多かった。
「現在の会社にいつまでいると思うか」については、1989年、1999年、2009年の調査結果を見ると、1989年は「なるべく早く転職する」「場合により転職する」「一人前になってから転職する」「適当な時期に独立する」といった転職、独立派が合計50.2%で、「定年まで勤めたい」の定年派は30.5%だった。1999年は、転職、独立派が合計60.6%、定年派が27.4%で差が広がった。2009年には、転職、独立派が合計45.7%、定年派が43.1%と、両者が同じくらいの割合となった。
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