東京大学は、ヒトが潜在意識下で地磁気に対する感受性を持つという証拠を発見した。研究成果の意義に加え、今回の実験手法は、ヒトの磁気感受性や第六感の研究者にとって1つの指針になると考えられる。
東京大学は2019年3月19日、ヒトが潜在意識下で地磁気に対する感受性を持つという証拠を発見したと発表した。これは、同大学やカルフォルニア工科大学などの国際共同研究グループによる研究成果だ。
ミツバチや鮭、渡り鳥のように、地磁気をナビゲーションに利用する動物は多数存在する。研究グループは、ヒトの磁気感受性を調べるため、電磁波ノイズを軽減する電磁波シールド暗室内にxyz3軸のコイルを設置し、地磁気程度の強度で方向のみ変化する磁界を生じる実験装置を作製した。これを用いて人工的な磁気刺激をヒトに与えながら、頭表の64カ所で脳波を計測した。
その結果、被験者は特定方向の磁気変化に対して、アルファ波の事象関連脱同期が観察された。アルファ波とは、アイドリング(特に何もしていない)状態で強く観察される8〜13Hzの脳波のことで、事象関連脱同期とは、その状態に視覚や聴覚など外部刺激が入ってきた時にアルファ波の強度が低下する現象のことだ。つまり、被験者は地磁気強度の磁気刺激に対して、潜在意識下で生理的に応答したことになる。
さらに、磁気感受性の反応が現れた方向は、N極が下向きに傾斜した刺激に対してのみだった。北半球ではN極の伏角(磁気が地表に対して持つ、直な方向の成分)は下向きに傾斜している。34人の被験者は、性別や人種、年齢はさまざまだが、普段はアメリカのカリフォルニア州(水平から下向き58.5度)や東京(同50度)で生活しており、これはその地で身体を動かした時に浴びる磁気変化だったと言える。
ヒトが潜在意識下で地磁気に対する感受性を持つという証拠を発見した、この成果自体の意義に加えて、ヒトの磁気感受性や第六感の研究者にとって、同研究の実験手法は1つの指針になると考えられる。研究グループは今後、ヒトの磁気感受性を証明する行動実験や、潜在意識下から顕在意識下へとさらに研究を進めていく。
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