東京大学は、脂質の一種とこれを生合成するL型酵素の働きをマウスを使って調べ、このL型酵素が肥満を調節する新たな酵素であることを明らかにした。
東京大学は2019年2月13日、肥満制御におけるプロスタグランジンD2(PGD2)とPGD2を生合成するL型酵素(L-PGDS)の働きを調べ、PGD2が肥満を調節する新たな酵素であることを明らかにしたと発表した。同大学医学部附属病院 特任研究員の裏出良博氏が大阪薬科大学、第一薬科大学と共同で研究した。
肥満は多くの生活習慣病の原因となるため、そのメカニズムを解明し、新たな抗肥満薬の開発につながる「肥満調節分子」の発見が期待されている。プロスタグランジンは生理活性脂質といわれ、複数の種類が存在する。研究グループはこれまで、PGD2が脂肪細胞に蓄積した脂肪の分解を抑制すること、L-PGDSの遺伝子発現が肥満マウスの脂肪組織において上昇することを明らかにしている。
今回の実験では、正常なマウスと、脂肪細胞で特異的にPGD2を作れないマウスに11週間、普通食あるいは高脂肪食を与えて肥満に対する影響を調べた。その結果、PGD2を作れないマウスは正常なマウスより体重増加が20%以上減少した。
また、脂肪細胞の分化の程度を知るマーカー遺伝子や脂肪酸の生合成に関わる遺伝子も発現が低下。血液中のコレステロール、脂質、グルコースの値も低下しており、これらメタボリックシンドロームで異常となる血液中の値も改善していた。さらに、高脂肪食を与えた時に炎症を誘導するマクロファージのマーカー遺伝子の発現レベルが低下し、糖尿病の指標となるインスリン感受性にも改善が見られた。
この成果により、PGD2の働きを抑制することによる新たな抗肥満薬の開発、肥満の新しい予防法・治療法の開発が期待される。
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