日本の給食が肥満を減らすことを実証医療技術ニュース

東京大学は、日本の思春期生徒の代表的サンプルを用いて、給食が過体重・肥満を減らすという効果を初めて実証した。今後は、個人レベルのデータの解析や給食が肥満を減らすメカニズムの究明が期待される。

» 2018年07月02日 15時00分 公開
[MONOist]

 東京大学は2018年6月7日、日本の思春期生徒の代表的サンプルを用いて、給食が過体重・肥満を減らすという効果を初めて実証したと発表した。この研究は、同大学大学院医学系研究科 教授の小林廉毅氏らの研究グループによるものだ。

 思春期の肥満は世界的に増加傾向にあるが、日本は他国に比べて、思春期の肥満が少ないといわれている。その理由の1つとして、日本の学校給食プログラムが挙げられてきたが、明確な根拠はなかった。

 同研究では、日本の中学校での給食の実施が、過去10年間に拡大したことを踏まえて、給食が中学生の肥満に及ぼす影響を調べた。まず、文部科学省が行っている学校給食実施状況等調査・学校保健統計調査の公開データから、「2006年から2015年の都道府県(以下、県)レベルの給食実施率」「県レベルの栄養状態の指標(過体重・肥満・やせの生徒の割合)」「平均身長」「平均体重」を性・年齢別に抽出した。

 解析方法はパネルデータ分析の手法を用い、前年の栄養状態の指標、県・年齢・観測年ごとの観察できない効果を調整した上で、最小二乗法で推定した。これにより、県レベルの給食実施率の変化が、翌年の県レベルの過体重・肥満・やせの生徒の割合と、翌年の平均体重・身長に与える影響が推定できた。

 その結果、県レベルの給食実施率が10%増加すると、翌年の過体重の男子の割合は0.37%、肥満の男子の割合は0.23%低下していた。最近の男子中学生の過体重・肥満の割合はそれぞれ約10%、約5%であることから、給食実施率が10%増加すると、1年で過体重の男子が約4%、肥満の男子が約5%減ることになる。

 一方で、女子については、有意な結果ではなかった。現在、日本の若年女性はやせ傾向にあり、食べる量がもともと少ないために給食による摂取カロリー抑制効果が小さい可能性があるという。さらに、やせの割合や県レベルの平均体重、平均身長については、男女共に統計学的に有意な効果は認められなかった。

 以上の結果から、学校給食プログラムを介した、適切な栄養基準に基づいた食事の提供は、思春期の肥満を減らす有効な施策の1つと考えられる。また、この結果は、学校給食に関する政策の重要な資料となると考えられ、今後は、個人レベルのデータの解析や給食が肥満を減らすメカニズムの究明が期待されるとしている。

photo A:2006年の県ごとの給食実施率、B:2010年の県ごとの給食実施率、C:2015年の県ごとの給食実施率、D:2006年から2015年の給食実施率の変化(クリックで拡大) 出典:東京大学

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