MONOist 海外と比べて国内におけるマテリアルズインフォマティクスの取り組みは遅れがちだと聞いています。そんな中で、材料メーカーではないパナソニックが一定の成果を出せている理由は何でしょうか。
相澤氏 電機メーカーとしてデバイスや機器を手掛けているので、それらに必要な材料に何が求められているかよく分かる点が、材料メーカーとは異なるかもしれない。また、マテリアルズインフォマティクスを進める上で重要な役割を果たす、データの収集やアルゴリズムのことを良く知る人材が社内にいて、最大限活用できることも大きい。
また、パナソニックには広範な分野にわたってさまざまな技術者が在籍しており、それらの技術者が交流する文化がもともとあることも強みになっているかもしれない。
MONOist 今後の研究開発の方向性について聞かせてください。
相澤氏 これからの研究開発はシミュレーションをどこまで活用できるかが重要になって来るだろう。研究開発の土台になる、「研究」で役立つのがマテリアルズインフォマティクスだが、そこで探索した新材料を使ってデバイスや機器につなげていく「開発」でもシミュレーションの果たす役割はどんどん広がっていくだろう。電池であれば、原子分子レベルからセルレベル、デバイスレベル、そしてシステムレベルまでシミュレーションを活用していく。もちろん実機を使った試験は必要だが、それを最小限にして、ほぼバーチャルの世界で研究開発を行えるようにしたい。
新材料開発にかかわる研究期間を半減するという目標の先には、開発、そしてその先の製造にかかる期間の大幅な削減まで視野に入る。もちろん、開発や製造となると、研究を担当するテクノロジーイノベーション本部の枠を超えて事業部との連携も必要になるだろう。研究開発から製造までが一気通貫につながるようにしたい。そのためにも、研究の部分で土台を作ってしっかり成果を出していく。
材料研究で実験は大変重要だが、実験室でいろいろと準備して実際に実験をするのは手間のかかる作業だ。マテリアルズインフォマティクスなどの活用が進めば、「実験する」という行為が、まずはPC上でバーチャルに行うということが当たり前になるかもしれない。
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