ネットワーク符号化を活用した多地点配信に関する研究では、ネットワーク技術の本質的ブレークスルーである「ネットワーク符号化理論」を応用している。これまでのネットワーク技術ではパケットの流入量と流出量を等しくする必要があり、大容量のデータ転送を行うにはネットワークリソースを十分に整えなければならない。増加するトラフィックに対応するために、通信事業者は大規模な投資を続けるいたちごっこが続いている。
ネットワーク符号化理論は上記課題の脱却を目指したものだ。同理論におけるネットワークでは、複数のパケットを符号化し1つのパケットに作り直す。このとき作り直したパケットには復号情報が含まれており、ネットワークの各ノードに伝送され宛先まで伝わる。パケットの流入量に対してネットワーク内の通信量を削減することができるが、同理論は実用化まで遠い状況で「さまざまな企業が研究しているが実用化には至っていない」(野口氏)という。
同理論をアドホックネットワークに適用した研究では、1対多のマルチキャスト通信の実現を目的としている。マルチキャストのアドホックネットワークを実現する場合、配信経路を特定する計算が困難であるためネットワーク内にデータを氾濫させる手法をとる。しかし、この手法では冗長通信が発生するためトラフィック氾濫問題が生じてしまう。
同研究では、この課題を解決するためネットワーク符号化理論を活用しネットワークに流れる複数のパケットを単一パケットとして符号化、ネットワークのパケットロス低減とトラフィック量削減の両立を実証した。
また、同研究室ではクルマにMANETシステムを実装して移動通信の評価を行った研究も行う。同研究では、V2Xや特定車両の追跡といった応用へのアドホックネットワーク適用可能性を検討する。
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