クアルコムは、同社が展開を強化しているメッシュWi-Fi技術について説明。米国市場ではメッシュWi-Fiを搭載するWi-Fiルーターの販売が急伸しており、「日本でも需要が期待できる」(同社)という。バッファローが、メッシュWi-Fi採用製品の開発を進めていることを明らかにした。
クアルコム ジャパンは2018年1月31日、東京都内で会見を開き、クアルコム(Qualcomm)が展開を強化している「メッシュWi-Fi」をはじめとするアンライセンスバンドのコネテクティビティ技術について説明した。
クアルコムと言えば、圧倒的なシェアを有するスマートフォンなどモバイル端末向けのプロセッサ「Snapdragon」が知られている。通信技術についても、3Gや4G/LTE、実証実験が始まっている5Gなどの携帯電話通信の技術で業界をけん引している。これら各国からの免許が必要な携帯電話通信がライセンスバンドと呼ばれているのに対して、Wi-FiやBluetooth、ZigBeeなど免許が不要な周波数帯域を用いる無線通信技術はアンライセンスバンドと呼ばれている。
クアルコムの技術開発部門であるQualcomm Technologiesでコネクティビティ担当のシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるラフール・パテル(Rahul Patel)氏は「クアルコムはライセンスバンドだけでなく、アンライセンスバンドの無線通信でも高い技術を提供している。中でもWi-Fiは、チップセットの出荷台数、販売金額、モバイル、PC、デジタルテレビなど個別市場のシェア、どれをとっても1位だ」と語る。
パテル氏が同社のWi-Fiにおけるリーダーシップの事例として紹介したのが、メッシュネットワーク技術を適用したWi-FiであるメッシュWi-Fiだ。同社のメッシュWi-Fiを採用した家庭用のWi-Fiルーターが18カ月前に米国内で発売されたが、それ以前のWi-Fiルーター市場におけるメッシュ技術の採用比率は5%程度だった。しかし現在は、メッシュ技術の採用比率が40%まで高まっているという。「この40%のうち90%でクアルコムのメッシュWi-Fiが用いられている」(パテル氏)という。
メッシュWi-Fiは、クアルコムは独自に開発したWi-Fi SON(Self Organizing Network)に基づくものだ。パテル氏は「米国の広い住宅内におけるWi-Fiの通信接続を高い品質で実現する上で、ユーザーにネットワーク設定などを意識させることなく自律的にWi-Fiのメッシュネットワークを構築できることが評価された」と説明する。また、これまでメッシュWi-Fiを採用していた企業は、米国や欧州、韓国、中国のメーカーだったが、今回の会見に併せて、日本のメーカーであるバッファローが搭載製品を開発中であることを明らかにした。
なお、日本の住宅は米国ほど大きくないため、メッシュWi-Fiの需要が少ない可能性がある。これについては「日本は、米国と逆に住宅が密集しているので、Wi-Fiの周波数帯域が混雑しがちだ。このような環境下でも高い品質での通信接続を提供できることを考えれば、メッシュWi-Fiの需要はあるだろう」(パテル氏)という。
さらにクアルコムは、メッシュWi-Fiに加えて、Bluetooth MeshやZigBeeといった他のメッシュネットワーク技術を統合した「Qualcomm Mesh Networking Platform」の展開も拡大していく方針である。パテル氏は「メッシュネットワークは、スマートホームやIoT(モノのインターネット)の導入を広げていく上で極めて重要な役割を果たすだろう」と述べ、Wi-Fiルーターにとどまらない需要の拡大が見込めるとした。
同氏は、クアルコムが、メッシュWi-Fiの他にもIEEE 802.11acの次世代規格である同802.11axの技術開発にも注力していることを強調。ファーウェイ(Huawei)による初の商用デバイス、KT(Korea Telecom)による初の商用サービスにもクアルコムの技術が採用されているという。加えて、60GHz帯を用いる同802.11adについて、2017年からWi-Fiルーターを皮切りに、スマートフォンやPCへの採用が始まっており、今後は現時点で有線接続が多いVR(仮想現実)やAR(拡張現実)のヘッドセットを無線化する用途などで市場が拡大する見通しも示した。
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