慶應義塾大学は、クチナシ由来の色素成分「クロセチン」に、近視の進行抑制に関連する遺伝子の1つ「EGR-1」の発現量を増やす効果があることなどを確認した。
慶應義塾大学は2019年1月23日、クチナシ由来の色素成分「クロセチン」に、近視の進行抑制に関連する遺伝子の1つ「EGR-1(early growth response 1)」の発現量を増やす効果があること、また、クロセチンが近視誘導モデルで近視進行の程度を示す指標を抑制することを確認したと発表した。この研究は、同大学医学部 教授の坪田一男氏らが、ロート製薬と共同で行った。
近視は、遺伝の他に、生活習慣などの環境因子も大きく関与することが分かっている。中でも、屋外活動が短いほど近視が進行することが報告されており、屋外環境に豊富にある波長域360〜400nmの光が近視進行を抑制することも分かっている。この光を浴びると、実験近視モデルで眼軸長伸長が抑制されEGR-1が有意に上昇する。
今回の研究では、このEGR-1遺伝子に着目し、EGR-1遺伝子の発現を高める食品素材のスクリーニングを実施した。そして、200種以上の素材の中でもクロセチンに、極めて高いEGR-1発現促進効果があることを発見した。
次に、同大学医学部で開発した、凹レンズを装用して近視を誘導するモデルにクロセチンを投与したところ、近視化の指標である「眼軸長の過剰伸長」「屈折度数の変化(近視化)」が抑制されることが確認できた。また、眼軸が伸びて近視が強くなると、見え方が変化するだけでなく、網膜の外側にある脈絡膜が薄くなるという現象も起こる。しかし、クロセチンを投与した際は、こうした脈絡膜の変化が抑制された。
今回の成果は、クロセチンが近視進行を抑制する可能性を示唆するものだ。この知見を生かして研究を進め、子どもの近視進行抑制に有用な製品の開発につながることが期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.