名古屋大学は、人間そっくりな眼科手術シミュレーターを開発した。2つの網膜硝子体手術の手技が練習できるほか、眼底網膜部に変形表示機能を搭載しており、手技の評価が可能だ。
名古屋大学は2017年8月7日、人間そっくりな眼科手術シミュレーターを開発したと発表した。2つの網膜硝子体手術の手技が練習できる他、眼底網膜部に搭載した変形表示機能により、手技の評価が行える。この研究は、名古屋大学大学院 工学研究科 教授の新井史人氏らの研究グループが、東京大学大学院 医学系研究科 教授である相原一氏の研究グループ、同工学系研究科 教授の光石衛氏の研究グループと共同で実施した。
同研究では、頭部形状をリアルに再現した眼科手術シミュレーターを開発。人間と同じ頭部形状で、かつ首が動かせるため、顔を横に向かせた状態で眼内観察ができる。眼球を容易に回転できる機構を採用し、眼球眼位を最大45度まで傾斜できる。眼位に比例して反発力を増加する機構を搭載しており、眼位に応じた自然な復元力が再現できる。
眼科手術シミュレーターには、内境界膜剥離術/マイクロカニュレーション手術という2つの網膜硝子体手術が可能な模擬眼球を搭載し、2つの手術動作の練習を可能にした。縫合糸を用いた眼位の調整と固定が可能で、実際の眼科手術に伴う一連の動作を模擬できる。特に網膜硝子体手術模擬では、開瞼器によるまぶたの開口やトロカールの設置、加圧インフュージョンシステムの導入、注射針を用いた眼球内の気泡除去、粘弾性の塗布、コンタクトレンズの設置、眼内洗浄などに対応した。
さらに、光弾性技術を用いて、眼底網膜部に変形表示機能を搭載。これにより、鉗子や針の過剰な押し込みを検知可能になった。具体的には、眼科手術シミュレーター内に搭載した近赤外LEDの光を円偏光に変換し、網膜部を透過した円偏光を偏光カメラで検出する。模擬網膜に印加された変形を偏光の位相差変化として算出することで、評価を可能にした。
同シミュレーターを用いることで、従来は困難だった手技の模擬と評価、一連の手術トレーニングができるようになった。今後は、変形量や応力が定量的かつリアルタイムに計測可能なシステムを構築し、手技の定量的評価システムの統合を目指す。また、緑内障手術が可能な眼球モデルも開発する予定だ。
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