慶應義塾大学は、360〜400nmのバイオレット光が近視進行(眼軸長伸長)を抑制することを発見した。ヒヨコを用いた実験では、バイオレット光を浴びると近視進行を抑制する遺伝子が上昇することが明らかになった。
慶應義塾大学は2016年12月26日、ヒヨコへの動物実験とヒトへの臨床研究により、360〜400nmのバイオレット光が近視進行(眼軸長伸長)を抑制することを世界で初めて発見したと発表した。
近視は発症・進行する原因が不明だった。これまで屋外環境が近視進行を抑制することが疫学研究や動物実験から指摘されてきたが、具体的に近視進行の抑制に何が効果があるのか、どんなメカニズムで抑制しているかは明らかになっていなかった。
研究グループは、屋外環境に豊富にあるバイオレット光に着目した。ヒヨコを用いて動物実験したところ、バイオレット光を浴びたヒヨコでは近視進行を抑制する遺伝子として知られているEarly growth response 1(EGR1[ZENK,zif268])が上昇。バイオレット光が近視進行を抑制するメカニズムとして、EGR1が関与している可能性を明らかにした。
また、ヒトへの臨床研究では、バイオレット光を透過するコンタクトレンズを装用している人は、そうでないものを装用している人よりも眼軸長伸長が抑制された。他にも、眼鏡を装用していると近視が進行することが研究結果により示唆された。
LEDや蛍光灯などの照明には、バイオレット光はほとんど含まれておらず、眼鏡やガラスなどの材質もバイオレット光をほとんど通さないという。日常生活の中ではバイオレット光を浴びる機会が少なくなっており、これが近視の世界的な増大と関係している可能性があると指摘している。
同研究は、同大学医学部の鳥居秀成特任助教と栗原俊英特任講師らによる研究で、医学雑誌「EBioMedicine」の2017年1月号に掲載される。
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